2024年11月10日

なぜ？高齢者は筋力がつきづらい理由について

こんにちは！桃谷うすい整形外科の瀬尾です！

今回は『年齢が上がると、なぜ筋肉がつきづらい？』という、疑問に対して解説をしていこうと思います。
加齢とともに筋力をつけることが難しくなるのは、多くの方が実感されていることでしょう。
ここでは、50歳以降の方々を対象に、高齢者が若年者に比べて筋力がつきづらい理由について、最新の研究結果をもとにわかりやすく解説します。

1. 筋肉量の自然な減少

加齢に伴い、筋肉量は自然に減少していきます。

• 30歳以降、筋肉量は10年ごとに約3〜8%ずつ減少します。
• 60歳以降は、この減少率がさらに高まります。

この自然な筋肉量の減少は、筋力をつけにくくする一因となります。

2. 筋肉の質的変化

加齢により、筋肉の質も変化します。

• タイプII筋線維（速筋線維）が特に減少します。
• 筋肉内の脂肪が増加し、筋肉の質が低下します。

これらの変化により、筋力の発揮が難しくなります。

※タイプII筋線維：瞬発力や急な動きが必要な場面で重要な役割を果たします。

3. ホルモンの変化

年齢とともに、筋肉の成長に関わるホルモンのバランスが変化します。

• テストステロンなどの筋肉増強に関わるホルモンが減少します。
• これにより、筋タンパク質の合成が低下します。

4. 細胞レベルでの変化

筋肉の細胞レベルでも、加齢による変化が起こります。

• ミトコンドリア（細胞のエネルギー工場）の機能が低下します。
• 筋肉タンパク質の合成を促す化学シグナル経路の効果が弱まります。

これらの変化により、筋肉の成長と修復が遅くなります。

5. 運動への反応の変化

高齢者の筋肉は、運動刺激への反応が若年者と異なります。

• 運動後の筋タンパク質合成の増加が、若年者ほど顕著ではありません。
• 筋肉の修復と成長に時間がかかります。

6. 栄養吸収の変化

年齢とともに、栄養の吸収や利用効率も変化します。

• タンパク質の消化吸収能力が低下します。
• 高齢者は若年者よりも多くのタンパク質摂取が必要とされます（少なくとも1g/kg体重/日）。

7. 生活習慣の影響

加齢に伴い、生活習慣も変化することがあります。

• 身体活動量が減少しがちです。
• 食事量が減少し、栄養不足になるリスクが高まります。

これらの要因が複合的に作用し、高齢者の筋力増強を難しくしています。

対策

筋肉の減少を予防するためには、以下のような対策が必要です。

1. 定期的な筋力トレーニング：週に2回以上の筋力トレーニングが推奨されます。
2. 十分なタンパク質摂取：1日あたり体重1kgにつき少なくとも1gのタンパク質摂取を心がけましょう。
3. バランスの取れた食事：ビタミンDやその他の栄養素も重要です。
4. 適度な有酸素運動：全身の健康維持に役立ちます。
5. 十分な休息と睡眠：筋肉の回復と成長に不可欠です。

まとめ対策

今回は「高齢者と筋肉の関係」について、解説をさせていただきました。
高齢者が筋力をつけにくい理由は複雑で、生物学的な変化から生活習慣まで多岐にわたります。
しかし、適切な対策を取ることで、筋力の維持・向上は可能です。

年齢に関わらず、適切な運動と栄養管理を続けることで、筋力の維持・向上は可能です。
ただし、新しい運動を始める前には、必ず医師や理学療法士、トレーナーに相談しましょう。
筋力トレーニングは、転倒予防や日常生活の質の向上にもつながります。
今日から、あなたの健康のために、できることから始めてみませんか？

JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。

• 引用文献
  ・Volpi E, Nazemi R, Fujita S. Muscle tissue changes with aging. Curr Opin Clin Nutr Metab Care.
  　2004 Jul;7(4):405-10.
  ・Voulgaridou G, Papadopoulou SD, Spanoudaki M, Kondyli FS, Alexandropoulou I, Michailidou S,
  　Zarogoulidis P, Matthaios D, Giannakidis D, Romanidou M, Papadopoulou SK. Increasing Muscle
  　Mass in Elders through Diet and Exercise: A Literature Review of Recent RCTs. Foods. 2023 Mar
  　13;12(6):1218.

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