コラム
Column
腱板断裂は手術しないと治らない?60・70代の保存療法とリハビリ
こんにちは、桃谷うすい整形外科の瀬尾です。
腱板断裂とは、肩の奥で腕の骨を支える4つの筋肉の腱(腱板)が切れた状態で、切れた腱は自然にはつながりません。それでも、日本整形外科学会によると約70%の方は保存療法(手術以外の治療)で症状が軽くなります。
この記事でわかること
- 腱が切れていても手術せずに痛みが和らぐ理由
- 保存療法が向く人・手術を相談したほうがよい人
- 保存療法をどのくらい続けて判断するか
「切れていると言われたら、もう手術しかない」。そう考えて不安になっている方に向けて、判断の材料を整理します。

腱板が切れているのに、なぜ手術せず痛みが和らぐの?
断裂があること自体が痛みの原因とは限らず、残った筋肉で肩の働きを補えるためと考えられています。日本のある地域で住民約680人の肩(1,366肩)を超音波で調べた研究では、腱板断裂が肩全体の20.7%に見つかりました。症状のない肩でも16.9%です。
残った腱板と、肩甲骨まわりや三角筋(肩を覆う筋肉)の働きを引き出すと、腕を上げる動きを支えやすくなることが期待されています。保存療法のリハビリで軸になるのは、「切れた腱を戻すのではなく、残った筋肉で補う」という考え方です。

保存療法が向く人・手術を相談したほうがよい人は?
加齢による小さな断裂は、保存療法が有力な選択肢です。55歳を超え、けがのきっかけがない小さな断裂(棘上筋という腱だけの断裂)を調べた研究では、手術と保存療法で5年以上たっても肩の機能に差がありませんでした。
一方で、小〜中サイズの断裂を10年追った別の研究では、腱を縫う手術のほうが成績がよかったと報告されています。研究によって結論が分かれるため、断裂の大きさや生活での肩の使い方を踏まえて考えることが大切です。
転倒などをきっかけに急に腕が上がらなくなった場合や、保存療法を続けても痛み・動かしにくさが改善しない場合は、手術について主治医と相談しましょう。

保存療法はどのくらい続けて判断する?
2〜3ヶ月ほどリハビリを続け、痛みや腕の上げやすさの変化を確かめることがひとつの目安になります。けがのきっかけがない全層断裂(腱が完全に切れた状態)に理学療法を行った多施設研究では、約75%の方が2年後も手術を選ばずに過ごせていました。
この研究は、開始から6週・12週の時点で手術を希望するか見直す設計で、手術を選んだ方の多くもこの時期に決めていました。学会の基準ではなく研究上の区切りですが、判断の目安として参考になります。
桃谷うすい整形外科での腱板断裂の治療とリハビリ
当院の特徴は、医師と理学療法士がともにエコー(超音波)を使って診療にあたる点です。医師は診察・注射をエコーで確認しながら行い、理学療法士もリハビリの中でエコーを使って筋肉や腱の状態を確認します。「どこに炎症があるか」「どの筋肉が弱いか」を医師とPTが共通の情報として持つことで、診察室とリハビリ室の間に方針のずれが生じにくい体制をとっています。
全ての治療の根底にあるものは、理学療法士によるリハビリテーションを基にした運動療法です。痛みが強い時期には、痛みの軽減や動かしやすさを目的に、エコーガイド下の注射やハイドロリリースを組み合わせることがあります。
担当の理学療法士はこう話します。「エコーをリハビリに使う理由は、見えないものを見えるようにするためです。どこが弱くて、どこに負担がかかっているかを患者さんと一緒に画面で確認しながら進めると、なぜこの運動が必要なのかが伝わりやすくなります。納得して取り組んでもらえると、回復のスピードも変わってくると感じています」

「切れている」と聞くと、動かすのが怖くなりますよね。残っている筋肉の働きを、できる範囲で引き出していきましょう。画面で一緒に確かめながら、動ける範囲を少しずつ広げていきます。
よくある質問(FAQ)
広がることがあります。症状のない加齢性の断裂を約5年追った研究では、全層断裂の61%で断裂が広がっていました。痛みが増した、力が入りにくくなったと感じたら、早めに受診して状態を確かめましょう。
痛みの出ない、無理のない範囲で行いましょう。自己判断で負荷を上げず、担当の理学療法士に相談しながら進めるのが安心です。
五十肩は関節を包む袋(関節包)の炎症や硬さが中心で、腱板断裂は腱そのものが切れた状態です。症状が似ているため、エコーで腱の状態を確かめると見分けやすくなります。
まとめ
腱板断裂は自然にはつながりませんが、加齢による小さな断裂では保存療法が有力な選択肢です。2〜3ヶ月を目安にリハビリの効果を確かめ、改善しなければ手術も含めて相談しましょう。天王寺区・桃谷駅周辺で肩の痛みにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 日本整形外科学会.「肩腱板断裂」(症状・病気をしらべる). https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rotator_cuff_tear.html
- Yamamoto A, et al. Prevalence and risk factors of a rotator cuff tear in the general population. J Shoulder Elbow Surg. 2010;19(1):116-120.
- Kukkonen J, et al. Operative versus conservative treatment of small, nontraumatic supraspinatus tears in patients older than 55 years: over 5-year follow-up of a randomized controlled trial. J Shoulder Elbow Surg. 2021;30(11):2455-2464.
- Moosmayer S, et al. At a 10-year follow-up, tendon repair is superior to physiotherapy in the treatment of small and medium-sized rotator cuff tears. J Bone Joint Surg Am. 2019;101(12):1050-1060.
- Keener JD, et al. A prospective evaluation of survivorship of asymptomatic degenerative rotator cuff tears. J Bone Joint Surg Am. 2015;97(2):89-98.
- Kuhn JE, et al. Effectiveness of physical therapy in treating atraumatic full-thickness rotator cuff tears: a multicenter prospective cohort study. J Shoulder Elbow Surg. 2013;22(10):1371-1379.
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状には個人差があります。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)
記事監修:臼井俊方
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