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【60代の指のしびれ】「年のせい」だけじゃない?その不調、首の加齢変化が原因かも

こんにちは、桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
「最近、指先がしびれて、細かい作業がしづらくなった」「朝起きると、手がこわばって感覚が鈍い」。そんな症状を、「もう年だから仕方ない」と諦めていませんか?その指先の不調は、単なる手の問題ではなく、長年体を支えてきた「首」の加齢性変化から来ている可能性があります。
なぜ60代から「首が原因のしびれ」が増えるのか
指先につながる神経は、首の骨(頸椎)の間から出ています。年齢とともにこの部分に変化が起こり、神経が圧迫されることで、遠く離れた指先にしびれや痛みが生じることがあります。これを「頸椎症性神経根症」と呼び、60代から特に増えてくる症状です。
原因1:頸椎のクッション(椎間板)の老化
首の骨と骨の間でクッションの役割を果たしている「椎間板」は、年齢とともに水分が失われ、弾力性が低下します。これにより、クッションとしての機能が弱まり、神経の通り道が狭まりやすくなります。
原因2:骨の変形(骨棘の形成)
不安定になった首を支えようと、体が防御反応として骨のフチにトゲ(骨棘:こつきょく)を作ることがあります。この骨のトゲが神経の通り道を狭め、神経根を刺激することで、しびれや痛みを引き起こします。
原因3:長年の生活習慣の蓄積
若い頃からの姿勢の癖や、仕事での負担などが数十年にわたって積み重なり、首へのダメージとして現れてくるのが60代です。これらの要因が、加齢による変化をさらに加速させることがあります。
もしかして首?日常生活でのチェックポイント
指のしびれが首に起因するかどうか、日常生活でのヒントを探してみましょう。
- 上を向く、うがいをするなど、首を後ろに反らすと指先にしびれが走る。
- 肩こりや首の痛みが、指のしびれと同時に起こることが多い。
- 特定の腕の角度(例えば、電車で吊り革を持つなど)で症状が出やすい、または和らぐ。
これらのサインは、首と指先の症状が連動している可能性を示唆しています。
放置するとどうなる?早めに受診すべきサイン
「そのうち治るだろう」と放置すると、症状が悪化する可能性があります。特に、以下のような症状は注意が必要です。
- しびれや痛みの範囲が広がってきた、または強くなってきた。
- お箸が持ちにくい、字が書きにくい、ボタンがかけにくいなど、指先の器用さが失われてきた(巧緻運動障害)。
- 腕や手の力が入りにくくなったと感じる。
- 歩行が不安定になったり、階段の上り下りが怖くなったりする。(これは脊髄本体の圧迫(脊髄症)の可能性があり、より緊急性が高いです)
当院でのアプローチ
当院では、まず詳しい問診と診察で、しびれの原因が首にあるのか、あるいは手根管症候群など他の病気の可能性はないかを慎重に鑑別します。レントゲン検査で骨の変形を確認し、必要であればMRI検査で神経の圧迫状態を詳しく調べ、診断を確定します。治療の基本は、首への負担を減らす生活指導、リハビリによる筋力強化やストレッチ、そして痛みを和らげるための薬物療法です。
まとめ
60代からの指のしびれは、これからの人生の質(QOL)を大きく左右する問題です。「年のせい」と諦めずに、その原因を正しく突き止めることが、健やかな毎日を維持するための第一歩です。首からのサインを見逃さず、適切なケアを始めることが大切です。
指先のしびれや、「もしかして?」と感じる症状があれば、我慢せずに一度お気軽に当院へご相談ください。
参照論文
- Caridi, J. M., Pumberger, M., & Hughes, A. P. (2011). Cervical radiculopathy: a review. HSS journal, 7(3), 265-272.
- Wong, C. C., & Varacallo, M. (2023). Cervical Spondylosis. In StatPearls. StatPearls Publishing.
- Iyer, S., & Kim, H. J. (2016). Cervical radiculopathy. Current reviews in musculoskeletal medicine, 9(3), 272-280.
- Ghasemi, M., & Ture, U. (2022). Clinical and surgical anatomy of the brachial plexus. In Nerves and Nerve Injuries (pp. 495-510). Academic Press.
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)