コラム
Column
足底腱膜炎の痛み、エコーで見える『本当の原因』
こんにちは、桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
「レントゲンでは異常なしと言われたのに、なぜこんなに痛いの?」足底腱膜炎で悩むランナーの多くが、こんな疑問を抱いています。朝の一歩目の激痛、走り出しの違和感、長引く足裏の痛み。レントゲンで骨に異常がないと言われても、痛みは確かに存在します。当院では、超音波(エコー)を用いることで、レントゲンでは見えなかった「本当の原因」を見つけ出します。今回は、エコーを活用した足底腱膜炎の診断について解説します。
エコー診断で見える「足底腱膜の炎症」と「隠れた原因」
エコーで見える足底腱膜の炎症
エコーは、レントゲンでは映らない筋肉、腱、靭帯、神経などの「軟部組織」をリアルタイムで見ることができる検査です。
正常な足底腱膜の厚さは約3〜4mmですが、足底腱膜炎の場合、かかとの付着部で約7mm前後まで肥厚しています。炎症を起こしている部分は、エコー画像で黒っぽく映り、周辺に少量の液体貯留(浮腫)が確認できます。
患者様と一緒に画像を見ながら説明することで、自分の足の中で何が起きているのかを「目で見て」理解できます。

動かしながら評価できる:ダイナミック評価
エコーのもう一つの強みは、「動かしながら評価できる」ことです。
足首を背屈(つま先を上に向ける)すると、足底腱膜が引き伸ばされ、炎症部分がさらに黒く映ります。これが朝の一歩目に痛みが強い理由です。
レントゲンでは静止画しか見えませんが、エコーなら動作に伴う組織の変化をリアルタイムで観察できます。
隠れた原因も同時に評価できる
足底腱膜炎の痛みは、足底腱膜だけの問題ではないことがあります。エコーを使うことで、関連する他の問題も同時に評価できます。
ふくらはぎの筋肉の硬さ
足底腱膜炎の方の多くで、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋、ヒラメ筋)が硬くなっていることがエコーで確認できます。ふくらはぎの筋肉が硬いと、アキレス腱を通じて足底腱膜に負担がかかります。
足の内在筋の萎縮
足の裏にある小さな筋肉(足底内在筋)も、エコーで評価できます。筋肉の厚さが薄い(萎縮のサイン)場合、足のアーチを支える力が弱く、足底腱膜に過度な負担がかかります。
かかとの骨棘(骨のトゲ)
かかとの骨に骨棘(骨のトゲ)がある場合、これが足底腱膜を刺激して、痛みの原因になっていることもあります。エコーでは、レントゲンと同様に骨の変化も観察できます。
エコー診断に基づく治療計画と効果の確認
エコーで見えた情報をもとに、具体的な治療計画を立てます。まず医師がエコーガイド下注射で、炎症部位に正確に薬液を注入し、骨棘周囲の炎症も同時に治療します。その後、理学療法士がふくらはぎのストレッチ、足底内在筋のトレーニング、インソールでアーチサポートを行います。
治療開始から2週間後、再びエコーで評価します。足底腱膜の厚さが7mmから5mmに改善し、エコー輝度の黒っぽい部分が減少(炎症が軽減)し、液体貯留が消失していく様子を、患者様ご自身の目で確認できます。エコー画像で、治療効果が「見える形」で確認できるため、患者様の安心感につながり、リハビリへのモチベーションも高まります。
当院のチームアプローチ:診断からリハビリまで一貫したエコー活用
セルフケアで改善しない場合、原因を正確に特定し、一人ひとりに合った治療計画を立てることが重要です。当院では、医師と理学療法士が連携し、超音波(エコー)を用いて一貫したサポートを提供します。
- STEP1:医師による「見える」診断 – エコーで足底腱膜の炎症の程度、関連する筋肉の状態、骨の変化をリアルタイムで観察し、痛みの根本原因を正確に突き止めます。患者様と一緒に画像を見ながら説明しますので、ご自身の足の状態を目で確認できます。
- STEP2:理学療法士による「動き」の評価と改善 – 診断情報をもとに、理学療法士がふくらはぎの硬さ、足底内在筋の筋力を詳細に評価します。リハビリの過程でもエコーを使い、筋肉が正しく動いているか、炎症が引いているかを確認しながら、最適な運動療法を行い、再発しない身体作りを目指します。
まとめ
足底腱膜炎は、エコーで「見える」診断が可能です。レントゲンでは見えない軟部組織を詳細に描出し、足を動かしながらリアルタイムで評価でき、左右の比較も簡単です。MRIのように数日待つ必要がなく、診察中にすぐ結果を確認でき、放射線被曝がないため、回復の経過を定期的に確認できます。「レントゲンで異常なし」と言われても、痛みの原因は必ず存在します。エコーで原因を可視化し、納得して治療を受けることが、早期復帰への近道です。
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ストレッチ方法
参考論文
- McMillan AM, et al. “Ultrasound guided corticosteroid injection for plantar fasciitis: randomised controlled trial”. BMJ. 2012; 344
- Tsai WC, et al. “Plantar fasciitis treated with local steroid injection: comparison between sonographic and palpation guidance”. J Clin Ultrasound. 2006; 34(1): 12-16.
「なぜ痛いのか」を目で見て確認し、納得して治療を受けることで、不安が安心に変わります。ランニングへの復帰を、私たちと一緒に目指しましょう。
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)