コラム
Column
足関節捻挫後の靱帯の確認 ~エコーを用いて~

こんにちは!桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
スポーツや日常生活で起こりやすい「足関節捻挫」。軽傷だと思って放置すると、将来的に慢性足関節不安定症へ移行する可能性もあります。今回は、足関節捻挫後の靱帯損傷のリスク、エコーを用いた評価の重要性、そして当院での治療アプローチについて解説します。
足関節捻挫後の靱帯損傷とは?
足関節捻挫の多くは、内反捻挫(足首を内側にひねる動作)で発生し、外側靱帯の中でも特に前距腓靱帯(anterior talofibular ligament, ATFL)が損傷を受けやすいとされています。
- 前距腓靱帯(ATFL)の特徴
- 足関節外側の安定性を担う主要な靱帯
- つま先を下に向けた状態(底屈位)での外力に弱く、捻挫時に損傷を受けやすい
- ATFLの損傷が重度になると、踵腓靱帯(CFL)や後距腓靱帯(PTFL)も損傷することがある

捻挫後の将来について(慢性足関節不安定症への移行)
捻挫後に適切な治療を行わない場合、足関節の安定性が低下し、慢性足関節不安定症(Chronic Ankle Instability, CAI)へ移行するリスクがあります。
- 慢性足関節不安定症の特徴
- 捻挫を繰り返しやすくなる
- 日常生活や運動時に足首がぐらつく感覚が続く
- 関節内の軟部組織の微細損傷や、筋の協調性低下が進行
- CAIのリスク因子
- 靱帯の不完全な治癒(特にATFLの機能低下)
- 筋力低下や固有感覚の障害
- 足関節のアライメント不良
このようなリスクを回避するためには、捻挫直後の正確な診断と適切な治療が重要です。
当院における原因の診断・評価の方法
エコー(超音波)を用いた評価
エコーは、足関節靱帯の損傷をリアルタイムで観察できる非侵襲的な診断ツールです。
- エコーによるATFL評価
- 正常なATFLは連続性が保たれ、線維が均一に観察される
- 損傷がある場合、靱帯の不連続、肥厚、低エコー(黒っぽく映る)などの異常が確認できる
- ストレスエコー(足関節を内反させながら観察)により、不安定性を評価
- 他の検査との比較
- レントゲン:骨折の有無は評価できるが、軟部組織の異常は検出困難
- MRI:靱帯や軟部組織の詳細な評価が可能だが、即時性に欠ける
- エコーは、MRIよりも手軽に動的評価が可能なため、診断や治療方針決定において有用
当院における治療法
1)エコーガイド下注射
- 炎症や痛みが強い場合、エコーを用いて炎症部位を特定し、局所麻酔薬や消炎鎮痛剤を正確に注射
- ハイドロリリース(生理食塩水を用いた組織リリース)を行い、靱帯周囲の滑走性を改善
- エコーガイド下で正確に注射することで、不要な組織損傷を防ぎながら効果的な治療が可能
2)理学療法(エコーガイド下)
- 関節の安定性向上トレーニング
- 足関節周囲の筋力強化(腓骨筋群、後脛骨筋など)
- 固有感覚トレーニング(バランス練習)で捻挫再発防止
- エコーを用いた動的評価を行いながら、適切なリハビリプログラムを提供
3)姿勢アライメント修正
- 足関節のアライメントが崩れると、過度な負担が靱帯や関節にかかるため、姿勢修正も重要
- 歩行動作や足部の荷重バランスを調整し、適切な動きができるよう指導
まとめ
足関節捻挫は一見軽症に思われがちですが、適切な治療を怠ると慢性足関節不安定症へ移行するリスクがあります。特に、前距腓靱帯(ATFL)の損傷は頻度が高く、エコーを用いた正確な評価と治療が重要です。
当院では、エコーによるリアルタイム評価を実施し、エコーガイド下注射や理学療法を組み合わせた包括的なアプローチで、捻挫後の適切なケアを提供しています。捻挫後に不安定感が残る方や、繰り返し足を捻る方は、ぜひ一度ご相談ください。
参考論文
- Yablon CM.
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このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)