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コラム

Column

2025年2月2日

膝の前が痛い!〜それは脂肪組織が問題を起こしている可能性があります〜

こんにちは!桃谷うすい整形外科の瀬尾です!

今回は、膝の前側に痛みが出る原因として注目される「膝蓋下脂肪体(ホッファ脂肪体)」についてお話しします。変形性膝関節症前十字靭帯損傷半月板損傷など、膝のトラブルを抱えている方のなかには、この脂肪組織の問題が絡んで痛みを悪化させているケースが少なくありません。今回は膝蓋下脂肪体とは何か、その脂肪組織がどんな役割を持つのか、なぜ痛みを引き起こすのか、そして炎症が起こる理由をわかりやすくまとめてみました。

膝蓋下脂肪体(ホッファ脂肪体)とは?

膝蓋下脂肪体(infrapatellar fat pad)は、膝のお皿(膝蓋骨)と脛骨の間あたりにある、クッションのような脂肪組織です。

  • 場所: 膝蓋骨の下(膝関節の前方)、膝蓋腱の奥に存在します。
  • 役割: 衝撃を吸収したり、膝関節の動きを円滑にしたりする働きがあり、日常生活やスポーツ動作で非常に重要です。

脂肪組織はどのような作用があるのか?

  1. 関節のクッション機能
    膝蓋下脂肪体は、膝が曲がったり伸びたりするときに膝蓋骨や大腿骨、脛骨などにかかる力を和らげてくれます。
  2. 滑液(関節液)を行き渡らせるサポート
    関節内部で潤滑を助ける滑液がスムーズに行き渡るように働き、膝関節がスムーズに動くための一助となります。
  3. 可動域の確保
    特にジャンプや階段の昇り降りなど、膝に強い力が加わる動作で、脂肪組織が変形しながら動きに合わせてフィットすることで、可動域をスムーズに保ちます。

なぜ脂肪組織が痛みを出すのか?

  1. 自由神経終末が多い
    膝蓋下脂肪体には、痛みを感知する自由神経終末が数多く存在します。何らかの理由でこの脂肪組織に刺激や圧迫が加わると、強い痛みを感じやすくなります。
  2. インピンジメント(挟み込み)
    膝を曲げ伸ばしする際、膝蓋下脂肪体が骨や腱に挟まれてしまうことがあります。これが繰り返されると、摩擦や炎症が進み、痛みが慢性化する場合もあります。
  3. 変形性膝関節症などの合併症
    変形性膝関節症や前十字靭帯損傷、半月板損傷などで膝関節のアライメントが乱れると、普段かからない力が膝の前方に集中し、膝蓋下脂肪体に過剰なストレスが加わりやすくなります。結果として痛みの悪化を招くケースがあります。

なぜ膝蓋下脂肪体に炎症が起こってしまうのか?

  1. 過度の使用や外傷
    スポーツでのジャンプやランニング、あるいは重い物を持っての階段昇降など、膝関節に大きな負荷が反復的にかかると、脂肪体が繰り返し刺激を受けて炎症を起こす場合があります。足の着地の衝撃を膝の前方で受け止め続けることで、徐々に組織が傷んでしまうのです。
  2. 手術後やケガ後の変化
    前十字靭帯損傷や半月板損傷などで手術を受けた後、膝蓋下脂肪体が瘢痕化(組織が硬くなる)や癒着を起こすことがあります。これにより関節の可動域が狭まり、脂肪体へのストレスが増えて炎症を起こしやすくなるケースがあります。
  3. 姿勢や動作の乱れ
    日常生活のなかで、極端に膝を伸ばしたり曲げたりする動作を繰り返す姿勢が続く場合にも、脂肪体が擦れやすくなり、微小な炎症が蓄積して痛みに至ることがあります。

まとめ

膝の前に痛みがあると、「膝蓋骨や軟骨、靭帯が悪いのかな?」と考えがちですが、実は膝蓋下脂肪体という脂肪組織がトラブルを起こしている場合も少なくありません。膝蓋下脂肪体は、膝関節のクッションとして重要な役割を果たしている一方で、自由神経終末が多く、炎症が起こると強い痛みの原因にもなります。もし変形性膝関節症や前十字靭帯損傷、半月板損傷などの合併症をお持ちの場合も、膝蓋下脂肪体が痛みを増幅させている可能性があります。痛みが長引くようであれば、専門の医療機関で早めに診察を受け、適切なリハビリテーションやケアを行うことが大切です。必要に応じて、アイシングや消炎鎮痛処置、ストレッチや運動指導などが行われ、症状の緩和が期待できます。膝の痛みを放置せず、快適な日常生活を送るために、ぜひ一度チェックしてみてください。

参考論文

  1. Dragoo JL, Johnson RG, McConnell J. Infrapatellar fat pad resection in the arthroscopic treatment of patellar tendinopathy. Arthroscopy. 2007;23(9):930–935.
  2. Uchio Y, Ochi M, Adachi N, Kawasaki K, Iwasa J. A new look at the Hoffa’s fat pad as a source of knee pain. Arthroscopy. 2000;16(8):949-954.
  3. Al Faqih R, Ouellet P, Sundby K, et al. Infrapatellar fat pad and knee osteoarthritis: Relationship with joint structural changes and clinical symptoms. Osteoarthritis and Cartilage. 2022;30(9):1123–1132.
  4. Bohnsack M, Huckfeldt R, Naal FD, et al. Arthroscopic resection of the infrapatellar fat pad in patients with chronic anterior knee pain. Arthroscopy. 2004;20(2):e13-e19.
  5. Khan KM, Cook JL, Bonar F, Harcourt P, Astrom M. Histopathology of common tendinopathies. Update and implications for clinical management. Sports Medicine. 1999;27(6):393–408.
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