コラム
Column
ランニング前後のコンディショニング完全ガイド:科学的根拠に基づくケアで差をつける
こんにちは、桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
目標タイムの更新、健康維持、あるいは純粋に走る喜びのため。多くのランナーが日々トレーニングに励んでいます。しかし、熱心に走る一方で、ランニング前後の「コンディショニング」を自己流で済ませてはいないでしょうか?「ただ何となくストレッチをしている」「ケアを怠って痛みを抱えている」…。それでは、パフォーマンスの向上どころか、思わぬ怪我につながりかねません。私たち桃谷うすい整形外科のメディカルチームが、科学的根拠に基づいた「勝つためのコンディショニング」を徹底解説します。
ウォーミングアップ:眠った筋肉と関節を”動かしながら”目覚めさせる
「運動前は、じっくり伸ばす静的ストレッチ」と考えているなら、その常識はアップデートが必要です。近年の研究では、ランニング前には「動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)」が推奨されています。これは、関節を大きく動かしながら筋肉をリズミカルに伸縮させる方法です。
医師が解説する、動的ストレッチの生理学的メリット
動的ストレッチを行うと、心拍数が少しずつ上がり、全身の血流が促進されます。これにより、筋肉の温度が上昇し、より柔軟で力を発揮しやすい状態になります。また、神経の伝達速度も向上するため、脳からの指令が筋肉へスムーズに伝わり、走り出しの動きが格段に滑らかになるのです。静的ストレッチのように筋肉を伸ばしきってしまうと、筋力や瞬発的なパワーが一時的に低下するという報告もあり、ランニング前の準備としては動的ストレッチが最適と言えます。
理学療法士が実践する、ランニングに特化した動的ストレッチ
「動きの専門家」である理学療法士の視点では、ランニングの実際の動きに近い動作で、特に重要な股関節や肩甲骨周りの可動域を広げることが重要だと考えます。以下のメニューをそれぞれ10〜15回ずつ、リズミカルに行いましょう。
- レッグスウィング(前後・左右): 壁などに手をつき、脚の付け根からリラックスして脚を前後にブラブラと振ります。横向きになり、左右にも同様に振ります。股関節の動きを滑らかにします。
- ヒップサークル: 直立し、腰に手を当てて、片足の膝を90度に曲げます。その状態で、股関節を軸に膝で円を描くように内外に回します。骨盤の安定に重要です。
- ショルダーサークル: 腕を伸ばしたまま、肩甲骨から大きく腕を前後に回します。スムーズな腕振りをサポートします。
クールダウンとリカバリー:身体を「修復モード」に切り替える技術
走り終えた身体は、いわば”興奮状態”にあります。心拍数を落ち着かせ、筋肉の緊張を和らげ、身体を「回復モード」へとスムーズに移行させることが、翌日のパフォーマンスを左右します。クールダウンは、トレーニングの一部と捉えましょう。
基本の「静的ストレッチ」と積極的リカバリー
ランニング後には、反動をつけずにゆっくりと筋肉を伸ばす「静的ストレッチ」が有効です。特に、お尻(大殿筋・中殿筋)、太ももの前・後(大腿四頭筋・ハムストリングス)、ふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)などを、それぞれ30秒ほどかけてじっくり伸ばしましょう。痛気持ちいい程度の強度で十分です。
さらに、回復を科学的に促進する以下の方法も取り入れてみましょう。
- 筋膜リリース: フォームローラーなどを使って、筋肉を覆う「筋膜」の癒着やねじれを解放します。特に張りを感じる太ももの外側(腸脛靭帯)やお尻に有効です。当院では超音波(エコー)で筋膜の状態を観察することがありますが、セルフケアでも硬くなった部分を丁寧にほぐすことで、血流改善や柔軟性の向上が期待できます。
- アイシング: 特に走り込んで膝や足首に熱っぽさや軽い痛みを感じる場合は、アイシングが有効です。氷嚢などを使い、15〜20分程度冷やすことで、炎症を抑制し、痛みを和らげます。
コンディショニングの「なぜ?」を解明する当院のチームアプローチ
適切なケアをしても痛みが改善しない、あるいは同じ怪我を繰り返してしまう場合、その背景には、自分では気づけない身体の「動きのクセ」や、微細な組織の損傷が隠れている可能性があります。当院では、医師と理学療法士が連携し、その「なぜ?」を徹底的に解明します。
パフォーマンスと怪我予防の鍵「体幹」
ランニングは全身運動ですが、その土台となるのが「体幹」です。強い体幹は、走行中の骨盤のブレを防ぎ、地面からのエネルギーを効率よく推進力に変えてくれます。逆に体幹が弱いと、フォームが崩れて膝や腰に負担がかかり、怪我のリスクが高まります。プランクやサイドプランク、ヒップリフト(ブリッジ)といった基本的なトレーニングを、日々のコンディショニングに組み込みましょう。
まとめ
ランニングのコンディショニングは、単なる儀式ではありません。ウォーミングアップで身体を目覚めさせ、クールダウンで修復を促し、体幹トレーニングで土台を固める、極めて科学的なプロセスです。一つ一つのケアの意味を理解し、正しく実践することが、怪我の予防とパフォーマンス向上の最短ルートと言えるでしょう。
ストレッチ動画
参考論文
- Esteban-García, P., Abin-Vicen, J., Sánchez-Infante, J., Ramírez-delaCruz, M., & Rubio-Arias, J. Á. (2024). Does the Inclusion of Static or Dynamic Stretching in the Warm-Up Routine Improve Jump Height and ROM in Physically Active Individuals? A Systematic Review with Meta-Analysis. Applied Sciences, 14(9), 3872.
- Van Hooren, B., & Peake, J. M. (2018). Do We Need a Cool-Down After Exercise? A Narrative Review of the Psychophysiological Effects and the Effects on Performance, Injuries and the Long-Term Adaptive Response. Sports Medicine, 48(7), 1575–1595.
- Huxel Bliven, K. C., & Anderson, B. E. (2013). Core Stability Training for Injury Prevention. Sports Health, 5(6), 514–522.
セルフケアで改善しない痛みや、繰り返す怪我にお悩みの方は、ぜひ一度、私たち専門家チームにご相談ください。あなたの走りを、医学と運動科学の両面から全力でサポートします。
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)