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コラム

Column

2025年3月9日

腕全体が痺れる、痛い〜原因は首の筋肉?(斜角筋について)〜

こんにちは!桃谷うすい整形外科の瀬尾です!

最近、腕全体が痺れたり痛みを感じるという症状でお悩みの方が増えています。これらの症状は、胸郭出口症候群といわれるもので出現することが多くあります。肩や首の筋肉が原因となる場合が多いのですが、特に斜角筋隙での神経圧迫が上肢全体の痛みや痺れに大きく影響する可能性があります。今回は、斜角筋隙における神経圧迫がなぜ上肢症状を引き起こすのか、当院での評価方法や治療法について詳しくご紹介します。

なぜ上肢に症状が出るのか?(斜角筋隙での神経圧迫)

斜角筋隙は、首の斜角筋群と前斜角筋、中斜角筋の間に存在する通路で、ここを腕神経叢や鎖骨下動脈が通っています。

  • 斜角筋隙の解剖学的重要性
    Jacene et al. (2007) の研究では、斜角筋隙の解剖学的構造が神経の圧迫リスクに関与する可能性が示唆されています。
  • 神経圧迫による症状
    斜角筋隙での持続的な筋緊張や解剖学的変異により、神経が圧迫されると、肩から腕全体にかけて痛みや痺れが放散することがあります。Toia et al. (2016) は、超音波を用いた評価が神経損傷の診断に有用であることを報告しており、斜角筋隙の狭小化が神経絞扼を引き起こすメカニズムの一端を示しています。

当院における原因の評価の方法

当院では、上肢の痛み・痺れの原因を正確に把握するため、以下の評価法を組み合わせています。

  • エコー(超音波)検査
    高解像度超音波を使用して、斜角筋隙内の筋肉状態や神経の走行、周囲組織との関係をリアルタイムに評価します。Stević & Mašulović (2008) や Sharma et al. (2013) の研究は、エコーが筋肉や腱の損傷評価に有用であることを示しており、斜角筋隙での神経圧迫評価にも同様の利点が期待されます。斜角筋間が10mm未満の方は圧迫を受けやすい構造を呈していると言われています。
  • 整形外科的テスト
    臨床検査では、患者様の症状の再現性や神経の圧迫感を確認するため、特定の整形外科的テストを実施しています。例えば、腕の特定の位置での触診や動脈の拍動を確認し、痛みや痺れの出現を確認することで、神経障害の可能性を評価しています。
斜角筋により神経や動脈が圧迫されている可能性があります。

Endoscopic-Assisted Transaxillary Approach for First Rib Resection in Thoracic Outlet Syndrome

当院における治療法

当院では、斜角筋隙に起因する神経圧迫による上肢の痛み・痺れに対して、以下の治療法を組み合わせた包括的なアプローチを提供しています。

  • エコーガイド下注射
    エコーで圧迫部位や炎症部位を正確に特定し、局所麻酔薬や消炎鎮痛剤を注射することで、神経圧迫の緩和と炎症の改善を図ります。特に、神経の滑走性改善を促すためにハイドロリリースを併用する場合もあります。
  • 理学療法(エコーガイド下)
    エコーで評価しながら、筋膜リリース、ストレッチ、筋力強化エクササイズを行い、斜角筋隙周辺の筋肉の緊張を緩和します。また、正しい姿勢や運動パターンの指導を行い、再発防止を目指します。
  • 姿勢アライメント修正
    長時間の不良姿勢は斜角筋隙内の神経への負担を増大させるため、デスクワークや日常生活での姿勢改善を図るための具体的な指導を実施しています。

まとめ

上肢に痛みや痺れが出る場合、斜角筋隙での神経圧迫がその原因の一端にあることが多いです。Jacene et al. (2007) や Toia et al. (2016) の研究により、斜角筋隙の解剖学的特徴と超音波評価の有用性が示されています。当院では、エコーを用いた詳細な評価と、エコーガイド下注射、エコーガイド下理学療法、姿勢アライメント修正といった多角的な治療法で、上肢の痛みや痺れの改善を目指しています。症状にお悩みの方は、早期の診断と適切な治療を受けることが快適な生活への第一歩です。

参考論文

  1. Jacene et al.
    Scalene muscle uptake: a potential pitfall in head and neck PET/CT. 2007.
  2. Toia et al.
    Preoperative evaluation of peripheral nerve injuries: What is the place for ultrasound 2016.
  3. Stević & Mašulović.
    Ultrasound diagnostics of muscle and tendon injuries. 2008.
  4. Sharma et al.
    Ultrasound evaluation of muscle and tendon. 2013.
  5. Zaidman et al.
    Peripheral nerve size in normals and patients with polyneuropathy: An ultrasound study. 2009.

JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。

このコラムを書いた人

理学療法士
瀬尾 真矢

患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

得意分野

変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)

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