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コラム

Column

2025年3月10日

腕全体が痺れる、痛い〜原因は胸の筋肉?(小胸筋について)〜

こんにちは!桃谷うすい整形外科の瀬尾です!

デスクワークやスポーツなど、日常生活の中で「腕全体が痺れる」または「痛みを感じる」症状にお悩みの方は多いと思います。実は、こうした症状は、胸郭出口症候群の症状の一つです。首や胸の筋肉、特に小胸筋が原因となっている場合があります。小胸筋が過度に緊張・短縮すると、胸郭出口隙間が狭まり、腕に分布する神経(特に神経絞扼性胸郭出口症候群として現れるケース)が圧迫され、上肢全体に痛みや痺れを引き起こすことがあります。

なぜ上肢に症状が出るのか?(小胸筋下の絞扼の問題)

小胸筋は、肩甲骨と胸骨の間に位置し、肩甲骨を前方に引く働きを持ちます。近年の研究(Sanders & Rao, 2010; Sanders, 2011; Ammi et al., 2017)では、小胸筋症候群(Pectoralis Minor Syndrome)が、神経性胸郭出口症候群(NTOS)の原因となることが示されています。

  • 小胸筋下の圧迫
    小胸筋が硬直または短縮すると、その下を通る神経や血管が絞扼され、腕全体に放散する痛みや痺れが引き起こされる可能性があります。
  • 症例報告
    一部の症例では、小胸筋の異常が単独で症状を引き起こす場合もあり、手術(小胸筋切離術)による改善が確認されています。

当院における原因の評価の方法

当院では、まず患者様の症状や既往歴、姿勢などの整形外科的テストを実施し、その上でエコー(超音波)検査を用いて小胸筋周辺の状態や、神経・血管の走行、圧迫の有無をリアルタイムで評価しています。

  • エコー検査
    小胸筋の形態や厚み、周囲の組織との関係を詳細に観察し、神経絞扼が疑われる場合は、神経の断面積やエコーテクスチャーの異常を確認します。
  • 整形外科的テスト
    肩や腕の動作テスト、圧痛点の確認などを通じて、胸郭出口の圧迫が症状に影響しているかどうかを評価します。

当院における治療法

当院では、原因に応じた多角的な治療アプローチを実施しています。

  • エコーガイド下注射
    エコーで圧迫部位や炎症部位を正確に特定し、局所麻酔薬や消炎鎮痛剤を注射します。場合によっては、生理食塩水を用いたハイドロリリースも行い、組織の癒着を解消し、神経や血管の滑走性を改善します。
  • 理学療法(エコーガイド下)
    エコーを活用しながら、神経の圧迫部位へのアプローチや滑走訓練を実施。小胸筋の過度な緊張を緩和するとともに、肩甲骨や胸椎の動作バランスを改善するためのトレーニングを行います。
  • 姿勢アライメント修正
    長時間の不良姿勢が小胸筋の短縮や硬直を引き起こすため、デスクワーク時の姿勢改善や生活習慣の見直しを指導し、胸郭出口のスペースを確保することで神経や血管への圧迫を軽減します。

まとめ

腕全体の痛みや痺れは、必ずしも肩や腕そのものの問題だけでなく、胸の筋肉、特に小胸筋の異常が原因となっている場合があります。小胸筋の過度な緊張や短縮は、胸郭出口隙間を狭め、神経や血管を圧迫し、上肢に痛みや痺れを引き起こすリスクを高めます。当院では、エコー検査と整形外科的テストを組み合わせた精密な評価により原因を特定し、エコーガイド下注射、エコーガイド下理学療法、姿勢アライメント修正などの治療法で症状の改善と再発予防を目指しています。腕の痛みや痺れでお悩みの方は、早期の診断と治療を受けることが快適な生活への第一歩です。

参考論文

  1. Sanders & Rao.
     The forgotten pectoralis minor syndrome: 100 operations for pectoralis minor syndrome alone or accompanied by neurogenic thoracic outlet syndrome.2010.
  2. Elsayed et al.
     Venous pectoralis minor syndrome: a rare subdivision of the thoracic outlet syndrome.2020.
  3. Sanders.
     Recurrent Neurogenic Thoracic Outlet Syndrome Stressing the Importance of Pectoralis Minor Syndrome.2011.
  4. Ammi et al.
     Frequency of the Pectoralis Minor Compression Syndrome in Patients Treated for Thoracic Outlet Syndrome.2017.
  5. Nassar et al.
     The value of neuromuscular ultrasound in relation to clinical and electrophysiological testing in the diagnosis of thoracic outlet syndrome.2018.
  6. Chengelis et al.
     The use of intravascular ultrasound in the management of thoracic outlet syndrome.1994.
  7. Demondion et al.
     Thoracic outlet: assessment with MR imaging in asymptomatic and symptomatic populations.2003.

JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。

このコラムを書いた人

理学療法士
瀬尾 真矢

患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

得意分野

変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)

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