コラム
Column
腕の外側が痛い、痺れる〜神経が圧迫されているかも〜

こんにちは!桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
日常生活やスポーツ活動、デスクワークなどで、腕の外側に痛みや痺れを感じる方は少なくありません。これらの症状は、主に筋皮神経(Musculocutaneous Nerve, MCN)およびその末梢である前腕外側皮神経(Lateral Antebrachial Cutaneous Nerve, LACN)が傷害されていることに起因する場合があります。特に、烏口腕筋(Coracobrachialis)の解剖学的変異により、これらの神経が異常な筋腹を貫通し、絞扼・圧迫を受けるリスクが高まることが報告されています。
なぜ腕の外側に症状が出るのか?
通常、MCNは上腕二頭筋や上腕筋を支配し、その末梢枝であるLACNが前腕の外側皮膚に感覚を伝えます。

- 解剖学的変異
研究によれば、烏口腕筋の変異(例えば、6頭を持つケースや、非常に稀な烏口腕筋長頭)が存在し、その結果、MCNが異常な筋腹を貫通することがあります。 - 神経の絞扼・圧迫
こうした解剖学的異常は、神経が過度な牽引や圧迫を受ける原因となり、結果として腕の外側に痛みや痺れを引き起こす可能性があります。

当院における原因の評価の方法
当院では、患者様の症状の原因を正確に把握するため、エコー(超音波)検査を中心とした評価を実施しています。
- エコー検査
リアルタイムでMCNやLACNの走行、太さ、エコーテクスチャーの変化を観察し、神経が異常な筋腹を貫通しているかどうか、また圧痛、神経の腫大や線維化などの所見を確認します。
当院における治療法
当院では、評価結果に基づき、以下の治療法を組み合わせた包括的なアプローチを行っています。
- エコーガイド下注射
エコーを用いて神経周囲の炎症や癒着部位を正確に特定し、局所麻酔薬や消炎鎮痛剤を注射します。必要に応じて、生理食塩水を用いたハイドロリリースにより、神経の滑走性改善と炎症の解消を目指します。 - 理学療法(エコーガイド下)
エコーで評価しながら、適切なストレッチ、筋力強化、筋膜リリースを行い、神経周囲の緊張を緩和します。また、正しい上肢の使い方や姿勢改善のためのエクササイズも指導し、再発防止に努めます。 - 姿勢アライメント修正
長時間の不良姿勢は神経への負担を増加させるため、デスクワーク時の姿勢指導や生活習慣の改善を通じて、全体的なアライメントの最適化を図ります。
まとめ
腕の外側に痛みや痺れが生じる原因として、筋皮神経およびその末梢枝である前腕外側皮神経の障害が挙げられます。特に、烏口腕筋の解剖学的変異がMCNの経路に影響を及ぼし、神経が絞扼されるリスクを高める可能性があります。当院では、エコー検査を用いて正確な評価を行い、エコーガイド下注射、エコーガイド下理学療法、姿勢アライメント修正などの治療法で症状の改善に努めています。腕の外側の痛みや痺れにお悩みの方は、早期に当院へご相談いただくことをおすすめします。
参考論文
- Zielinska N, Olewnik Ł.
Six-headed coracobrachialis muscle.
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Anatomic Variations of the Musculocutaneous Nerve and Clinical Implications for Restoration of Elbow Flexion.
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DOI: 10.1016/j.jhsa.2022.07.014 - Olewnik Ł, et al.
Potential compression of the musculocutaneous, median and ulnar nerves by a very rare variant of the coracobrachialis longus muscle.
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A rare bilateral variant of the coracobrachialis muscle with supernumerary heads and coexisted variant branching patterns of the brachial plexus and the axillary artery.
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DOI: 10.1007/s00276-023-03088-w - Colak T, et al.
Nerve conduction studies of the axillary, musculocutaneous and radial nerves in elite ice hockey players.
J Sports Med Phys Fitness. 2009 Jun;49(2):224-231.
PMID: 19528903
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)