コラム
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肩の後ろが痛い、痺れる人必見!〜肩甲上神経の問題があるかも!?〜

こんにちは!桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
肩の後ろに痛みや痺れがあると、日常生活やスポーツに支障をきたすことがあります。これらの症状は、しばしば肩甲上神経の圧迫や障害に起因している場合があります。今回は、肩甲上神経とは何か、その走行と機能、また悪い姿勢や前方頭位(FHP)による筋の緊張がどのように神経障害を引き起こすかについて解説し、当院での評価方法および治療法をご紹介いたします。
肩甲上神経とは?
肩甲上神経(Suprascapular Nerve)は、主に肩甲上部を走行し、棘上筋と棘下筋を支配する神経です。また、肩関節の一部にも感覚を提供し、肩の動きや外旋に重要な役割を果たしています。
- 走行
頚椎(C5–C6)の神経根から分岐し、肩甲切痕を通過して棘上筋および棘下筋に分布します。 - 支配領域
主に肩の外旋と腕の挙上に関与し、肩関節周囲の感覚にも影響を与えます。

どのような問題で起こりやすいか?
**悪い姿勢や前方頭位(FHP)**は、肩甲上神経に対して間接的に悪影響を及ぼす要因です。
- 筋の緊張
長時間のデスクワークやスマートフォン操作による前方頭位は、肩や首の筋肉(僧帽筋、肩甲挙筋など)に持続的な緊張を引き起こします。これにより、肩甲上神経が走行する狭い肩甲切痕で圧迫され、神経伝達が妨げられ、痛みや痺れとして現れる可能性があります。 - 肩関節の障害
腱板損傷や五十肩などで肩周辺の筋力が低下すると、肩甲上神経が正しい位置で滑走できず、圧迫状態となるリスクが高まります。
当院における原因の評価方法
当院では、患者様の肩甲上神経の状態を正確に評価するため、以下の方法を用いています。
- 身体所見と整形外科的テスト
患者様の姿勢、特に前方頭位や肩甲骨の位置、肩や背中の筋緊張、圧痛部位などを丁寧に確認し、肩甲上神経周辺の問題の可能性を評価します。 - エコー(超音波)検査
高解像度エコーを使用して、肩甲上神経の走行やその周辺の軟部組織(棘上筋、棘下筋など)の状態をリアルタイムで評価します。これにより、神経が圧迫されている箇所や、炎症、癒着の有無を詳細に把握することができます。
当院における治療法
当院では、肩甲上神経の圧迫による症状改善のため、以下の治療法を組み合わせたアプローチを実施しています。
- エコーガイド下ハイドロリリース
エコーを用いて正確に圧迫部位を特定し、生理食塩水や局所麻酔薬、消炎鎮痛剤を注射することで、神経周囲の癒着を解消し、神経の滑走性を改善します。 - 理学療法(エコーガイド下)
エコー検査の結果に基づき、棘上筋や棘下筋のリリース、ストレッチ、筋力強化エクササイズを実施します。正しい肩甲骨の動きと筋力バランスを取り戻すことが、神経圧迫の緩和に寄与します。 - 姿勢アライメント修正
長時間の前方頭位や不良姿勢が肩甲上神経に過度な負担をかけるため、日常生活や作業環境における正しい姿勢の指導を行い、全体の身体バランスを改善することを目指します。
まとめ
肩の後ろの痛みや痺れがある場合、その原因は肩甲上神経の圧迫にあるかもしれません。悪い姿勢や前方頭位による筋の緊張が、肩甲上神経の走行経路である肩甲上骨筋孔付近で神経を圧迫し、症状を引き起こすことが明らかになっています。当院では、身体所見とエコー検査を組み合わせた精密な評価を実施し、エコーガイド下ハイドロリリース、エコーガイド下理学療法、姿勢アライメント修正などの治療法で、症状の改善と再発防止を目指しています。肩の痛み、痺れでお悩みの方は、ぜひ早期にご相談ください。
参考論文
- Polguj et al.
Usefulness of Ultrasound in Procedures at the Suprascapular Notch Region. 2016. - Metwally et al.
Suprascapular Nerve: Anatomical and Clinical Study. 2016. - Lancaster et al.
Blockade of the Suprascapular Nerve: A Radiological and Cadaveric Study Comparing Landmark and Ultrasound-guided Blocking Techniques. 2013 - Laumonerie et al.
Description and ultrasound targeting of the origin of the suprascapular nerve. 2017 - Blasco et al.
Ultrasound-Guided Proximal and Distal Suprascapular Nerve Blocks: A Comparative Cadaveric Study. 2020
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)