コラム
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肩こりに関与する僧帽筋~筋肉を支配している神経が圧迫されているのが原因かも~

こんにちは!桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
長時間のデスクワークやスマートフォンの使用など、日常生活で多くの人が悩む「肩こり」。その主な要因のひとつに挙げられるのが、首から肩・背中にかけて広がる僧帽筋の過緊張です。実は、この僧帽筋を支配している神経が圧迫されていることで痛みや凝りが強まるケースもあります。今回は、僧帽筋の働きと支配神経、当院で行っている評価方法や治療法についてわかりやすく解説します。
僧帽筋と肩こりの関係
1)僧帽筋とは?
僧帽筋は、頭の後ろから肩・背中の上部にかけて広がる大きな筋肉です。3つのパート(上部・中部・下部)に分かれており、肩甲骨の上下移動や内転(肩甲骨を背骨に寄せる動作)に関与します。
- 肩こりと僧帽筋上部
とくに上部僧帽筋が過緊張すると、首の後ろが張りやすくなり、典型的な「肩こり」の症状が生じやすいとされています。
2)肩こりのメカニズム
- 長時間の不良姿勢やデスクワークで、僧帽筋が持続的に収縮したままになる
- 筋肉内の血行不良や代謝産物の蓄積が起こり、痛みや凝りを感じる
- 支配神経が圧迫されることで、神経性の痛みやしびれが増幅するケースもある
僧帽筋を支配している神経とは?
僧帽筋の主な支配神経は、副神経(脳神経XI、Spinal Accessory Nerve)です。
- 副神経の走行
頭蓋内から出た後、胸鎖乳突筋を支配し、その後に僧帽筋へ向かいます。 - 圧迫されやすいポイント
副神経が僧帽筋内や筋膜近くで何らかの癒着や絞扼を受けると、僧帽筋の正常な働きが損なわれ、こりや痛みが長引く原因となり得ます。

当院における原因の評価方法
エコーを用いた評価
- リアルタイム観察
超音波(エコー)を使って、僧帽筋やその周辺で走行する副神経の状態を観察。筋肉の肥厚や癒着、神経周囲の滑走不良などを確認できます。 - 神経絞扼の可能性
エコーで痛みの出る部位を直接観察しながら押さえてみることで、神経が圧迫されるときの痛みの変化をチェックします。
当院における治療法
1)エコーガイド下注射
- ハイドロリリース
必要に応じて、生理食塩水で筋膜や神経周辺の癒着を物理的に剥がし、可動域や血流を改善します。
2)理学療法(エコーガイド下)
- ストレッチ・筋力バランス調整
僧帽筋を含む肩甲帯周辺の筋肉を正しくほぐしつつ、姿勢改善に取り組みます。 - 筋・筋間、神経へのアプローチ
エコーを用いて筋・筋間、神経の動きを確認しながら、硬くなっている部分を効率的にリリース。 - 生活習慣・姿勢指導
デスク環境や普段の姿勢を見直し、肩・首に負担がかからない動きを習得するようアドバイスします。
まとめ
「肩こり=僧帽筋の過緊張」と考えられがちですが、僧帽筋を支配する副神経が圧迫されることで症状が悪化している可能性もあります。エコーを活用した診断・評価によって、筋肉・神経の状態を正確に把握し、エコーガイド下注射や理学療法を組み合わせることで、頑固な肩こりの改善が期待できるでしょう。
参考論文
- Barbero M, et al. Myofascial trigger points and innervation zone locations in upper trapezius muscles. BMC Musculoskelet Disord. 2013 Jun 8;14:179. DOI: 10.1186/1471-2474-14-179
- Dalpiaz A, et al. Dry Needling and Photobiomodulation Decreases Myofascial Pain in Trapezius of Women: Randomized Blind Clinical Trial. J Manipulative Physiol Ther. 2021 Jan;44(1):61-71. DOI: 10.1016/j.jmpt.2020.07.002
- Kim SJ, Lee JH. Effects of sternocleidomastoid muscle and suboccipital muscle soft tissue release on muscle hardness and pressure pain of the sternocleidomastoid muscle and upper trapezius muscle in smartphone users with latent trigger points. Medicine (Baltimore). 2018 Sep;97(36):e12133. DOI: 10.1097/MD.0000000000012133
- Xie P, et al. Lidocaine Injection in the Intramuscular Innervation Zone Can Effectively Treat Chronic Neck Pain Caused by MTrPs in the Trapezius Muscle. Pain Physician. 2015 Sep-Oct;18(5):E815-26. PMID: 26431135
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このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)