コラム
Column
肩が上がりづらい・痛い――もしかすると「神経」が原因かもしれません
こんにちは!桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
日常生活のなかで、腕を上げようとしたときに「なんだか肩周りが痛い」「上がりづらい」と感じたことはありませんか?
一般的には「五十肩」などの肩関節周囲炎をまず疑う方が多いかもしれません。
しかし、実は肩甲骨の外側を通る「腋窩神経(えきかしんけい)」の異常が、こうした症状の背景に隠れていることもあります。
今回は、腋窩神経周囲に行う「ハイドロリリース」という新しい治療法をご紹介します
腋窩神経とは?
腋窩神経は、肩の外側や上腕の外側に感覚と運動機能を与える重要な神経です。
上腕骨の近くを走行し、三角筋の働きや感覚を司っています。
よく問題が起きるのが、肩関節の後方、いわゆる「QLS部(Quadrilateral Space:四辺形間隙)」と呼ばれるエリア。
ここを通過するときに、腋窩神経が周囲の組織によって圧迫や癒着を起こすと、肩を動かすときの鋭い痛みや、腕の上げづらさを引き起こすことがあります。
腕が上がりづらい・痛い症状との関係
腋窩神経がトラブルを起こすと、以下のような症状が現れることがあります。
1. 肩外側の痛み
特に三角筋周囲に痛みが出やすく、腕を横に上げる(外転する)動作が困難になりがちです。
2. 可動域の制限
手が水平以上に上がらなかったり、上げようとすると引っかかるような違和感を覚えたりします。
3. 力が入りづらい・しびれ
神経が圧迫されると、三角筋への神経伝達がうまくいかず、上腕部や肩外側にしびれや力の入りづらさを感じることもあります。
肩関節周囲炎や腱板損傷など他の肩障害とも症状が似ているため、腋窩神経による症状を見落としてしまうことも少なくありません。
ハイドロリリースとは?
ハイドロリリースは、注射によって生理食塩水や局所麻酔薬などの液体を注入し、神経と周囲組織との癒着をはがす治療法です。
組織の癒着を物理的に剥離(リリース)することで、神経周囲の緊張を緩和させます。
これにより、神経の通り道がスムーズになり、痛みや可動域制限の大幅な改善が期待できます。
ハイドロリリースのポイント
● 短時間で施術が可能
一般的には外来でも行える治療です。
● 侵襲が少ない
手術ではなく注射によるアプローチのため、身体への負担が比較的軽く済みます。
● 即時効果を得られる場合も
施術直後から痛みや可動域が改善するケースも少なくありません。
QLS部でのハイドロリリース
腋窩神経は、QLS(四辺形間隙)と呼ばれる部分を通過するときにとくにトラブルを起こしやすいといわれています。
1. 四辺形間隙は狭い
大腿骨と比べると上腕骨は小さく、神経と血管、筋肉が限られた空間に密集しています。
2. 癒着・圧迫を受けやすい
筋肉や靭帯、結合組織が硬くなると神経を圧迫しやすく、痛みや可動域制限の原因になることがあります。
このQLS部の神経周囲にハイドロリリースを行うことで、固まった組織を剥がし、神経を解放してあげるのが狙いです。
上手くいくと、「まるで肩が軽くなった」と感じるほど劇的な改善を体感する方もいらっしゃいます。
治療を検討する際の注意点
1. 専門医への相談が必要
ハイドロリリースが効果的かどうかは個人差があります。腋窩神経以外の病態が隠れている可能性もあるため、整形外科医など肩の専門医に相談し、正しい診断を受けることが大切です。
2. リハビリテーションとの併用
ハイドロリリース後は、肩関節周囲の柔軟性向上や筋力改善を図るため、適切なリハビリテーションを行いましょう。
3. 再発防止策
日常姿勢の改善や、肩を無理なく動かすエクササイズを継続することが再発防止につながります。
動画でわかるハイドロリリース
実際のハイドロリリースのイメージがつかみにくい方には、手技を解説した動画がとても参考になります。
施術の流れや注射のポイント、使用する機器など、文章だけでは伝えきれない具体的な情報を映像で学んでみてください。
まとめ
一見、五十肩や腱板損傷と紛らわしい「肩が上がりづらい・痛い」症状でも、原因が腋窩神経のトラブルであることがあります。
QLS部での腋窩神経周囲にハイドロリリースを行うことで、癒着がはがれて症状が劇的に改善するケースは決して少なくありません。
長年の肩の痛みや可動域制限にお悩みの方は、ぜひ専門医に相談し、適切な診断と治療を受けてみてはいかがでしょうか。
肩の不快感から解放されると、日常生活がぐっと楽になるはずです。
最近流行り? ハイドロリリースって何?
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人
瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)