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コラム

Column

2025年6月2日

手術が必要な棘上筋断裂とは?保存療法との違いと判断の目安

こんにちは!桃谷うすい整形外科の瀬尾です!

「肩の腱が切れていると言われたけど、手術は必要?」「安静にしていれば治るのでは…?」

肩の痛みや動かしづらさの原因として多い棘上筋(きょくじょうきん)断裂。この断裂が起きたとき、手術するべきか、保存療法(手術をしない治療)で経過を見るべきかは、多くの方が悩むポイントです。
本コラムでは、どのような場合に手術が必要とされるのか、また保存療法で経過を見るときの注意点について、信頼できる研究に基づいてわかりやすく解説します。

棘上筋断裂に対する「保存療法」とは?

保存療法とは、手術をせずにリハビリや生活指導で肩の機能改善を目指す方法です。小さな断裂や痛みが軽度なケースでは、筋力トレーニングや可動域訓練、鎮痛薬などを用いながら機能維持を図ることで、日常生活に支障をきたさないレベルまで改善することがあります。実際に、60代以上の高齢者で活動量がそれほど高くない人では、保存療法で十分な結果を得られる例も報告されています。

腱板断裂

手術が推奨されるケースとは?

一方で、次のような条件に当てはまる場合は、断裂が進行したり、機能回復が困難になったりするため、手術が推奨されることがあります

  • 中等度〜広範囲の棘上筋断裂
  • 保存療法を3か月以上行っても改善が見られない
  • 夜間痛が強く、睡眠に支障がある
  • 肩が上がらない(可動域制限)
  • 腱断端が大きく後退している、筋肉の萎縮が進んでいる(画像検査所見)
  • 日常動作や仕事に支障が大きい(介護、重労働、スポーツなど)

研究では、断裂サイズが大きくなるほど保存療法の効果は下がり、最終的に手術に至る確率が高くなるとされています。

判断の目安となる「進行リスク」と画像評価

手術が必要かどうかを判断する上で、医師はMRIや超音波検査などで以下の所見を確認します:

  • 断裂の大きさ(全層断裂か部分断裂か)
  • 筋肉の萎縮や脂肪変性があるか
  • 腱の後退距離(リトラクション)

特に、腱が後方に引き込まれていたり、筋肉の質が悪化している場合には、早期の手術が検討されることがあります。なぜなら、一度進行すると手術しても十分に回復しにくくなるからです。

保存療法と手術のメリット・デメリット比較

治療法メリットデメリット
保存療法・体への負担が少ない
・日常生活レベルの回復が可能
・断裂が進行するリスク
・痛みや機能が十分に改善しない可能性
手術療法・根本的な断裂の修復が可能
・機能改善の可能性が高い
・手術リスクやリハビリ期間が必要
・高齢者では合併症リスクあり

まとめ

棘上筋断裂に対する治療は、「必ず手術」でも「必ず保存療法」でもありません。
断裂の大きさ、症状の強さ、生活スタイル、画像所見などを総合的に判断して、適切な治療方針を選ぶことが大切です。早期の画像診断と、専門医との継続的な相談が、後悔しない選択への第一歩です。「今は我慢できる痛みだから…」と放置せず、まずは整形外科で正確な評価を受けましょう。

参考論文

  • Risk Factors for Supraspinatus Tears: A Meta-analysis. Zhao J et al. Orthopaedic Journal of Sports Medicine. 2021. doi:10.1177/23259671211039130. PMID: 34660827
  • Various risk factors for supraspinatus tendon tear: A case control study. Ahmad RG et al. Journal of Musculoskeletal Surgery and Research. 2022. doi:10.4103/jmsr.jmsr_104_21. PMID: 35060519
  • Risk factors of tear progression in symptomatic small to medium full-thickness rotator cuff tears. Ko SH et al. Journal of Shoulder and Elbow Surgery. 2023. doi:10.1016/j.jse.2022.09.014. PMID: 36252783
  • Investigating the multifactorial etiology of supraspinatus tendon tears. Lawrence RL et al. Journal of Orthopaedic Research. 2024. doi:10.1002/jor.25705. PMID: 37814893
  • A Cross-Sectional Study on Novel-Risk Factors Associated with Supraspinatus Tendon Tears. Haveri S, Gawande J. Indian Journal of Orthopaedics. 2020. doi:10.4103/ortho.IJOrtho_220_19. PMID: 33927825

JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。

このコラムを書いた人

理学療法士
瀬尾 真矢

患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

得意分野

変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)

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