コラム
Column
小指側が痺れる、痛い〜尺骨神経障害があるかも〜

こんにちは!桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
日常生活やスポーツ、デスクワークなどで、しばしば「小指側が痺れる」「腕の内側に痺れ、痛みを感じる」といった症状に悩む方がいます。これらの症状は、主に尺骨神経(Ulnar Nerve)の障害が原因となることが多く、特に肘部管(ちゅうぶかん)での神経絞扼が影響している可能性があります。今回は、なぜ小指側に症状が現れるのか、当院での評価方法および治療法について詳しく解説いたします。
なぜ小指側に症状が出るのか?
尺骨神経は、上腕部から肘を経由し、主に小指側とその隣接領域の皮膚感覚を伝えています。肘部、特に肘部管やその周辺での神経圧迫は、以下のような原因で発生します。
- 外傷や反復ストレス
急性の外傷や長時間の不良姿勢、反復動作により、尺骨神経が圧迫されると、神経伝導が障害され、小指側や手の外側に痛みや痺れが生じます。 - 神経の断面積の増大や形態異常
尺骨神経の断面積(Cross-Sectional Area, CSA)が超音波検査で増大している場合、神経の炎症や腫脹、または圧迫が起こっていることを示唆します。これらの変化は、神経障害の重症度と相関することが報告されています。
当院における原因の評価の方法
当院では、尺骨神経障害の評価に特にエコー(超音波)検査を活用しています。エコー検査は非侵襲的で、リアルタイムに神経の状態を観察できるため、以下のような評価が可能です。
- 神経の断面積(CSA)の測定
超音波を用いて尺骨神経の断面積を測定し、通常の値と比較して神経が腫れているかどうかを確認します(Sultan et al., 2015; Schertz et al., 2017)。 - 神経の走行やエコーテクスチャーの評価
神経の連続性、形態の変化、周囲の組織との関係を評価することで、圧迫や損傷の有無を判断します。

当院における治療法
当院では、尺骨神経障害に起因する小指側の痛みや痺れに対して、以下の治療法を組み合わせた包括的なアプローチを実施しています。
- エコーガイド下注射
エコーを用いて神経周囲の炎症部位や癒着部位を正確に特定し、局所麻酔薬や消炎鎮痛剤を注射(ハイドロリリース)します。これにより、神経の炎症を鎮め、症状の緩和を図ります。 - 理学療法(エコーガイド下)
エコーで神経状態を確認しながら、筋膜リリース、ストレッチ、筋力強化エクササイズを行い、腕全体の血流改善と神経圧迫の解消に努めます。 - 姿勢アライメント修正
長時間の不良姿勢が尺骨神経への圧迫を助長するため、デスクワークや日常生活での正しい姿勢の保持、歩行・動作の指導を行い、神経への負担を軽減します。
まとめ
小指側の痛みや痺れは、尺骨神経の圧迫や損傷によって引き起こされることが多く、特に肘部周辺での神経絞扼が症状の原因となっています。当院では、エコーを用いた正確な評価と、エコーガイド下注射、エコーガイド下理学療法、姿勢アライメント修正などの治療法で、症状の改善と再発防止を目指しています。もし小指側の痛みや痺れにお悩みの方は、早期に専門医にご相談ください。
参考論文
- Zhong et al.
The High-Resolution Ultrasonography and Electrophysiological Studies in Nerve Decompression for Ulnar Nerve Entrapment at the Elbow.
Semin Musculoskelet Radiol. 2012;17(1):60-68.
DOI: 10.1055/s-0033-1333916 - Sofka CM, Adler RS.
Ultrasound-guided interventions in the foot and ankle.
Semin Musculoskelet Radiol. 2002;6(2):163-168.
DOI: 10.1055/s-2002-32362 - Sultan et al.
Can Ulnar Nerve Cross-Sectional Area Replace Electrodiagnostic Studies In The Diagnosis Of Ulnar Nerve Entrapment?2015. - Catanzaro et al.
Ultrasound Assessment of the Ulnar Nerve Around the Elbow and Diagnosis of Cubital Tunnel Syndrome, Clinical Outcomes.2023. - Schertz et al.
High-resolution ultrasound in etiological evaluation of ulnar neuropathy at the elbow.2017.
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)