コラム
Column
大学講義について

こんにちは。桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
理学療法士を目指す学生さん向けに、当院院長が「関節」をテーマとした授業を行いました。肩・股・膝という臨床頻度の高い3大関節に絞り、構造・病態・画像・治療を90分で総整理。配布スライドの要点を、復習しやすいコラム形式でまとめます。
1. 関節総論:動きと安定のしくみ
院長は冒頭で「可動域(Mobility)と安定性(Stability)は二律背反ではなく、構造と制御で両立する」と解説。滑膜関節を構成する4要素――骨形態・軟骨・靭帯/関節唇・筋腱ユニット――を図示し、以下のフレームで整理しました。
- 形態的安定:骨同士のかみ合わせ。
- 受動的制御:靭帯・関節包・関節唇が「動きの限界」を定義。
- 能動的制御:筋と腱がリアルタイムで微調整。
2. 膝関節 — 変形性関節症と画像読影
■ 病態進行:初期⇔末期
講義スライドでは“痛くなるパターン”を2段階で説明。
- 初期:加齢・酷使・外傷 → 軟骨片が剥離 → 滑膜炎 → 腫れ・痛み。
- 末期:軟骨消失 → 骨同士が接触 → 神経露出で骨性痛。
■ KL 分類の押さえどころ
Grade | 代表所見 |
---|---|
0 | 正常 |
1 | 疑わしい骨棘 |
2 | 明確な骨棘(ターニングポイント!) |
3 | 骨棘+関節裂隙狭小化 |
4 | 高度狭小化+骨硬化・嚢胞 |
■ 治療アルゴリズム
- 鎮痛:内服・ヒアルロン酸・PRP 等で疼痛コントロール。
- 運動療法:痛みが落ち着いたら大腿四頭筋・殿筋強化。
- 荷重管理:体重減少&杖・インソールで関節反力↓。
変形性ひざ関節症
3. 肩関節 — 腱板断裂と前方脱臼
■ 腱板断裂
- Acromio–humeral interval(AHI)7–14 mmが正常。
- 腱板断裂では AHI 狭小化+大結節変性を X 線で確認。
- 超音波で“full-thickness”か“partial”かを術前評価。
腱板断裂
■ 前方脱臼
- 外傷性:手をついて転倒 → 肩甲上腕関節の前方嚢・関節唇損傷。
- バンカート損傷/ヒルサックス陥凹を CT or MRI で追加チェック。
- 整復後は外旋40°制限+腱板強化で再脱臼を予防。
反復性肩関節脱臼
4. 股関節 — 頸部骨折と転子部骨折
■ 血流と治療方針の違い
骨折型 | 血流 | 合併症 | 標準治療 |
---|---|---|---|
頸部骨折 | 骨頭血流×(関節包内) | 骨頭壊死リスク高 | 非転位→ORIF/転位→人工関節 |
転子部骨折 | 骨頭血流○(包外) | 失血多い | 原則 ORIF(早期荷重) |
■ PT 介入のポイント
- 起立・歩行練習は術翌日からが多い。
- 脱臼肢位(内転・内旋・過屈曲)を徹底指導(人工股関節後)。
- 四頭筋・殿筋の再教育でトレンデレンブルグ歩行を防止。
5. PT学生への3つの学びポイント
- 画像と触診をリンク — “骨の凹凸”をX線と模型で一致させる。
- 病期で評価を変える — 初期滑膜炎と末期骨性痛ではゴールが違う。
- 運動連鎖を俯瞰 — 痛む関節だけでなく上下関節の代償を追う。
まとめ
肩・股・膝の3関節は「可動域と安定」のバランス点がそれぞれ異なります。院長は構造▶病態▶画像▶治療▶リハビリの流れで整理し、学生の皆さんが臨床で迷わないロジックを提示しました。今回の要点を復習し、明日の意欲高く学んでいってほしいと思います!
参考資料
- 日本整形外科学会. 診療ガイドラインシリーズ.
- Dutton M. *Orthopaedic Examination, Evaluation, and Intervention.* 5th ed.
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)