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コラム

Column

2025年5月29日

なぜ腱板(棘上筋)は切れてしまうのか?―60代から増える“肩の断裂”の意外なリスクとは

こんにちは!桃谷うすい整形外科の瀬尾です!

「最近、肩が痛くて腕が上がりにくい…」「重い荷物を持っただけでズキンとする」
そんな悩みを感じていませんか?
特に60歳を過ぎたあたりから、肩の痛みや動かしづらさを訴える方が増えてきます。それは、腱板(けんばん)断裂という、肩の筋肉の一部が切れてしまう病気かもしれません。その中でもよく見られるのが「棘上筋(きょくじょうきん)」の断裂。実は、知らないうちに“切れやすい条件”が揃っていることが多いのです。

加齢は「必然」ではなく「リスク因子」

腱板断裂、とくに棘上筋断裂は高齢者に多いとされていますが、「年だから仕方ない」というわけではありません。
2021年の大規模メタ解析によると、加齢自体が棘上筋断裂の発症率を高める一因であることが明らかになりましたが、あくまで“多因子のひとつ”にすぎません。つまり、年齢だけで断裂するのではなく、他のリスクと重なることで発症しやすくなるのです。

「手の使いすぎ」と「姿勢」が破綻の引き金に

「昔から肩をよく使ってきた」という方ほど注意が必要です。
ある研究では、繰り返す肩の使いすぎ(オーバーユース)や重いものを持つ仕事に従事していた人は、そうでない人と比べて腱板断裂のリスクが有意に高まることが示されました。
また、肩をすぼめたような悪い姿勢(猫背や巻き肩)によって肩関節の機械的なストレスが増え、腱板への負担が蓄積することもわかっています。

高血圧、糖尿病、喫煙歴も関係?

驚くことに、内科的な病気や生活習慣も腱板断裂と関係があるという報告があります。

特に糖尿病や高血圧、喫煙歴のある人では、腱板の血流が低下しやすく、組織の修復力が弱まることで断裂リスクが高くなる可能性が指摘されています。
このような“全身的な健康状態”も、肩の痛みに大きく関わっているのです。

小さな断裂でも放置すると拡大のリスク

「痛いけど動かせるから大丈夫」と放置していると、小さな断裂が徐々に大きくなり、最終的に手術が必要になることもあります
最新の研究では、症状のある中程度の腱板断裂は半年〜1年で進行するケースが少なくないと報告されています。
放置しないことが、将来的な肩の機能低下を防ぐ第一歩です。

まとめ

腱板断裂、特に棘上筋の断裂は、「年のせい」だけではありません。

  • 長年の肩の使いすぎ
  • 姿勢の崩れ
  • 生活習慣病や喫煙歴

これらが重なることで、肩は静かに、しかし確実にダメージを受けています。
肩の違和感や痛みに気づいたら、早めに整形外科を受診し、画像検査(MRIや超音波)で状態を確認することが大切です。
予防と早期発見が、健康な肩を守る最大の武器です。

腱板断裂

参考論文

  • Risk Factors for Supraspinatus Tears: A Meta-analysis. Zhao J et al. Orthopaedic Journal of Sports Medicine. 2021. doi:10.1177/23259671211039130. PMID: 34660827
  • Various risk factors for supraspinatus tendon tear: A case control study. Ahmad RG et al. Journal of Musculoskeletal Surgery and Research. 2022. doi:10.4103/jmsr.jmsr_104_21. PMID: 35060519
  • Risk factors of tear progression in symptomatic small to medium full-thickness rotator cuff tears. Ko SH et al. Journal of Shoulder and Elbow Surgery. 2023. doi:10.1016/j.jse.2022.09.014. PMID: 36252783
  • Investigating the multifactorial etiology of supraspinatus tendon tears. Lawrence RL et al. Journal of Orthopaedic Research. 2024. doi:10.1002/jor.25705. PMID: 37814893
  • A Cross-Sectional Study on Novel-Risk Factors Associated with Supraspinatus Tendon Tears. Haveri S, Gawande J. Indian Journal of Orthopaedics. 2020. doi:10.4103/ortho.IJOrtho_220_19. PMID: 33927825

JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。

このコラムを書いた人

理学療法士
瀬尾 真矢

患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

得意分野

変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)

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