コラム
Column
【軟骨がすり減ったから痛い?】実は“軟骨自体”は痛みを感じません

こんにちは。桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
膝や股関節の検査で「軟骨がすり減っていますね」と言われた経験はありませんか?
「だから痛いのか」と思いがちですが、実は軟骨自体には神経が通っていないため、直接的に痛みを感じることはありません。
では、なぜ「軟骨損傷があると痛みが出る」のでしょうか? 今回はその仕組みについて、わかりやすく解説していきます。
軟骨は“痛みを感じない”組織です
軟骨は、骨の表面を覆って衝撃を吸収し、関節の動きを滑らかにする重要な組織です。
しかし、軟骨には神経も血管もありません。そのため、たとえ損傷していても、軟骨自体が痛みを感じることはないのです。
それなのに「軟骨がすり減った=痛い」と思われる背景には、周囲の組織への影響があります。

痛みの本当の原因はどこにあるのか?
軟骨損傷が原因で痛みが出る場合、実際には滑膜炎や軟骨下骨が関係しています。
① 滑膜炎(かつまくえん)
関節内を包む滑膜は、関節液を分泌する役割を持ち、神経が豊富に分布している敏感な組織です。
軟骨が傷つくと、摩耗した断片や炎症物質が滑膜を刺激し、炎症(滑膜炎)を引き起こします。これにより腫れ・熱感・ズキズキした痛みが生じます。
② 軟骨下骨(なんこつかこつ)への負荷
軟骨が大きく損傷してなくなると、その下にある軟骨下骨が直接圧力を受けるようになります。
この軟骨下骨には神経が通っているため、衝撃や摩擦によって鋭い痛みを感じやすくなります。
特に進行した変形性関節症では、痛みの多くがこの軟骨下骨由来であることが多いとされています。
“痛み=軟骨損傷”とは限りません
画像で軟骨損傷が見つかったからといって、必ずしもその損傷部位が痛みの原因とは限りません。
実際には、軟骨の摩耗が周囲の組織に及ぼす影響(滑膜炎や骨へのストレス)が、痛みの正体であることが多いのです。
このように、軟骨損傷=直接的な痛みではないという正しい理解は、過剰な不安を抱かずに治療へ取り組むためにも重要です。
まとめ:軟骨損傷と痛みの関係を正しく理解しよう
「軟骨がすり減っているから痛い」と言われた場合でも、痛みの原因は軟骨自体ではなく、滑膜炎や軟骨下骨の負荷によるものであることが多いです。
痛みの仕組みを正しく理解することで、適切な治療やリハビリ、予防法の選択につながります。
気になる膝や関節の痛みがある方は、まずはお気軽にご相談ください。
参考文献
- Felson DT. (2006). “Clinical practice. Osteoarthritis of the knee.” New England Journal of Medicine, 354(8), 841-848.
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)