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【ランニングで膝の外側が痛い?】腸脛靭帯炎(ランナー膝)にご注意を

こんにちは。桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
ランニングやサイクリングなどの運動を日常的に行っている中年男女の皆さま、膝の外側に痛みを感じたことはありませんか? それは腸脛靭帯炎(ランナー膝)かもしれません。
本コラムでは、腸脛靭帯炎の原因や症状、予防法について、最新の研究を基にわかりやすく解説します。
腸脛靭帯炎とは?
腸脛靭帯炎(Iliotibial Band Syndrome: ITBS)は、膝の外側に痛みを引き起こす一般的なスポーツ障害です。特にランナーやサイクリストに多く見られます。
腸脛靭帯は、骨盤から脛骨(すねの骨)の外側にかけて走る厚い結合組織で、膝の安定性を保つ役割を果たしています。運動中にこの靭帯が過度に緊張し、周囲の組織と摩擦を起こすことで炎症や痛みが生じます。

なぜ腸脛靭帯炎が起こるのか?
従来、腸脛靭帯炎は腸脛靭帯が大腿骨外側上顆(太ももの骨の外側の突起)と擦れることによって発症すると考えられてきました。しかし、最近の研究では、摩擦ではなく、腸脛靭帯とその下にある脂肪組織や滑液包が圧迫されることによって炎症が起こるという説が有力になっています。
特に、膝を約30度曲げた状態での圧迫が痛みの原因となることが示されています。これは、ランニングやサイクリングなどの動作中によく見られる膝の角度です。
腸脛靭帯炎の症状
腸脛靭帯炎の主な症状は、膝の外側に鋭い痛みを感じることです。以下のような状況で痛みが増すことがあります:
- ランニングやサイクリングなどの運動中
- 特に下り坂を走るとき
- 膝を約30度曲げた状態での動作時
痛みが進行すると、日常生活の中でも違和感を感じるようになることがあります。
予防と対策
腸脛靭帯炎を予防するためには、以下のポイントに注意することが重要です:
- 適切なウォーミングアップとクールダウン:運動前後のストレッチを欠かさず行いましょう。
- 筋力バランスの改善:特に股関節周囲の筋肉(中臀筋など)を強化することで、膝への負担を減らすことができます。
- トレーニング量の調整:急激な運動量の増加は避け、徐々に負荷を上げていきましょう。
- 適切なシューズの選択:クッション性やサポート力のあるシューズを選びましょう。
また、痛みが出た場合は、運動を中止し、患部を冷やすなどの初期対応を行い、早めに専門医の診察を受けることをおすすめします。
まとめ
腸脛靭帯炎は、運動を楽しむ中年男女にとって注意すべきスポーツ障害の一つです。適切な予防策と早期の対処によって、症状の悪化を防ぐことができます。
膝の外側に違和感や痛みを感じた場合は、無理をせず、専門医の診察を受けることをおすすめします。
参考文献
- Fairclough, J., et al. (2006). “Is iliotibial band syndrome really a friction syndrome?” Journal of Science and Medicine in Sport, 9(1–2), 74–79.
- Fredericson, M., et al. (2000). “Hip abductor weakness in distance runners with iliotibial band syndrome.” Clinical Journal of Sport Medicine, 10(3), 169–175.
- Geisler, P. R. (2021). “Revisiting Iliotibial Band Friction Syndrome: A Literature Review and Proposed Treatment Paradigm.” International Journal of Sports Physical Therapy, 16(4), 1003–1013.
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)