コラム
Column
「子供の扁平足」と「大人の扁平足」は別物!放置してはいけない“成人期扁平足”の正体
こんにちは、桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
「私は生まれつき扁平足だから、足が疲れやすいのは仕方ない」
「うちの子、土踏まずがなくて扁平足だけど、大丈夫かしら?」
足に関するお悩みで、このように「扁平足は生まれつきのもの」と思い込んでいる方、そして心配されている親御さんは非常に多くいらっしゃいます。
しかし、ご存知でしたか?
実は、心配のいらない「子供の扁平足」と、中年期から痛みと共に進行する「大人の扁平足」は、全くの別物なのです。
この記事では、その決定的な違いと、放置してはいけない「成人期扁平足」のサイン、そして当院での専門的な治療法について詳しく解説します。

心配いらない?「子供の扁平足」の特徴
まず、多くのお子さんに見られる扁平足についてです。
実は、生まれたばかりの赤ちゃんは全員が扁平足です。足の骨格がまだ未発達で、足裏には脂肪もたくさんついています。そこから歩き始め、活発に運動する中で、足の筋肉や靭帯が発達し、小学校高学年ごろまでには自然と土踏まず(アーチ)が形成されていきます。
このような子供の扁平足は「柔軟性扁平足」と呼ばれ、以下のような特徴があります。
- 痛みがほとんどない
- つま先立ちをすると、ちゃんと土踏まずが現れる
- 成長とともに自然に改善することが多い
これは病気ではなく、成長過程の一段階ですので、基本的には過度な心配や特別な治療は必要ありません。
要注意!中年期から始まる「成人期扁平足」の恐怖
一方、大人の扁平足、特に「成人期扁平足」は全く性質が異なります。これは、若い頃は正常な土踏まずがあったのに、成人になってから、多くは40代以降に徐々にアーチが潰れてくる進行性の疾患です。
その最大の原因は、アーチを吊り上げている最も重要な腱である「後脛骨筋腱(こうけいこつきんけん)」が、加齢や体重増加、そして女性の場合はホルモンバランスの変化などによって、伸びてしまったり、機能不全に陥ったりすることです。
この「成人期扁平足」には、以下のような危険なサインが伴います。
- 足の内側(くるぶしの下あたり)が腫れて痛む
- 短時間歩いただけでも、足やふくらはぎが異常に疲れる
- 年々、土踏まずが低くなっている気がする
- 進行すると足の形が変形し、膝痛や腰痛の原因にもなる
あなたの足はどっちのタイプ? 簡単な見分け方
いつから?
- 心配いらない「子供の扁平足」の場合:
子供の頃からずっと見られます。 - 要注意の「大人の扁平足」の場合:
大人になってから、徐々に土踏まずが低くなってきました。
痛みは?
- 心配いらない「子供の扁平足」の場合:
ほとんど痛みを伴いません。 - 要注意の「大人の扁平足」の場合:
足の内側(くるぶし周辺)に痛みや腫れが出ることが多いです。
進行は?
- 心配いらない「子供の扁平足」の場合:
成長とともに変化しない、または自然に改善します。 - 要注意の「大人の扁平足」の場合:
年々アーチが低くなるなど、変形が進行することがあります。
つま先立ちをすると?
- 心配いらない「子供の扁平足」の場合:
きちんと土踏まず(アーチ)が現れます。 - 要注意の「大人の扁平足」の場合:
アーチが現れない、または痛くてつま先立ちがしにくいです。
さらに、「成人期扁平足」が進行している場合、「too many toes sign(トゥーメニートゥズ・サイン)」という特徴的なサインが見られます。
まっすぐに立った状態で、後ろからふくらはぎを見てもらった時、健康な足では小指側の指が1〜2本見える程度です。しかし、扁平足が進行して足が外側に変形すると、小指側から3本以上の指が見えるようになります。これは、足の構造が崩れ始めている重要なサインです。
「大人の扁平足」は改善できる?当院の専門的アプローチ
「子供の扁平足」が経過観察で良いのに対し、「成人期扁平足」は進行性の疾患であり、放置すれば変形が進み、将来的に歩行に大きな支障をきたす可能性があるため、早期の適切な治療が非常に重要です。
「もう年だから…」と諦める必要はありません。当院では、痛みを和らげ、変形の進行を食い止めるための専門的な治療を行っています。
- 理学療法: 国家資格を持つ理学療法士が、弱ってしまった後脛骨筋を鍛えるための専門的な運動療法や、硬くなったアキレス腱のストレッチなどを指導します。また、お客様一人ひとりの歩き方を分析し、足に負担のかからない歩き方を身につけるサポートをします。
- インソール(足底板)療法: これは「成人期扁平足」の治療の柱の一つです。お客様の足の形や変形の度合いを精密に評価し、オーダーメイド、またはそれに準じた医療用のインソールを作成します。インソールが崩れたアーチを物理的に下から支えることで、後脛骨筋への負担を劇的に減らし、痛みを和らげ、変形の進行を抑制します。
まとめ:「扁平足は生まれつき」という思い込みを捨て、足のサインを見逃さないで
「扁平足」と一括りにしてしまいがちですが、成長過程である子供の扁平足と、中年期から始まる病的な成人期扁平足は全くの別物です。
もし、あなたが大人になってから「足の形が変わってきた」「内くるぶしが痛む」「すぐに足が疲れる」といったサインを感じたら、それはあなたの足が助けを求めている証拠です。そのサインを見逃さず、ぜひ一度、専門家にご相談ください。適切な治療で、この先の人生もご自身の足で快適に歩き続けられるよう、私たちが全力でサポートします。
参考論文
- Uden H, Scharfbillig R, Causby R. The typically developing paediatric foot: how flat should it be? A systematic review. Journal of Foot and Ankle Research 2017;10:37.
- Bubra PS, Keighley G, Rateesh S, Carmody D. Posterior tibial tendon dysfunction: an overlooked cause of foot deformity. Journal of Family Medicine and Primary Care 2015;4(1):26-29.
- Alvarez RG, Marini A, Schmitt C, Saltzman CL. Stage I and II posterior tibial tendon dysfunction treated by a structured nonoperative management protocol: an orthosis and exercise program. Foot & Ankle International 2006;27(1):2-8.
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)