コラム
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放置するとどうなる?棘上筋断裂の“進行リスク”とその予防策

こんにちは!桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
「肩が少し痛いけれど、そのうち治ると思って…」「上がりにくいけど動かせるから放っている」――そんな風に肩の痛みを“様子見”していませんか?
実は、痛みの裏に棘上筋(きょくじょうきん)断裂という、肩の腱が切れてしまっている状態が隠れていることがあります。
しかも、その断裂を放置してしまうと、静かに進行して取り返しがつかなくなることもあるのです。
小さな断裂でも油断できない理由
棘上筋断裂は、最初は「少し痛む」「腕が上がりにくい」といった軽い症状から始まることが多く、無症候性(痛みがない)で発見されるケースも少なくありません。しかし、そのまま使い続けることで断裂が徐々に広がっていくことが、多くの研究で示されています。とくに2023年の研究では、中程度の腱板断裂を放置すると、半年から1年以内に進行する例が多いと報告されています。
腱板断裂
進行するとどうなるのか?
棘上筋の断裂が拡大すると、次のような深刻な影響が出てきます:
- 肩の挙上(バンザイ動作)ができなくなる
- 夜間痛が悪化し、眠れない
- 肩の筋肉(棘上筋・棘下筋)が萎縮して手術が難しくなる
また、断裂が大きくなると手術をしても回復が難しくなる可能性があり、可逆的な状態から不可逆的な障害に移行してしまうのです。
放置リスクを高める因子
次のような要因がある方は、棘上筋断裂の進行リスクが高まると報告されています:
- 60歳以上の高齢者
- 糖尿病や高血圧などの基礎疾患を持つ
- 喫煙歴がある
- 肩の繰り返し使用(重労働・スポーツ)
これらが重なることで、腱の血流が低下し、自然治癒が難しくなると考えられています。
進行を防ぐためにできること
放置によるリスクを回避するためには、以下のようなアクションが推奨されます:
- 早期の整形外科受診と画像診断(超音波・MRI)
- 肩への過負荷を避ける生活指導
- 肩周囲筋の適切な運動療法(無理な筋トレはNG)
- 喫煙の中止、血圧・血糖の管理
断裂が小さいうちに発見できれば、保存療法で進行を防ぐことが可能です。
まとめ
「痛いけど、まだ動くから…」という考えが、将来的に肩の機能を大きく損なう可能性があります。
棘上筋断裂は、放置すれば進行し、手術の成功率も下がる可能性があります。
早期発見と適切な管理が、肩の健康を守る最大の予防策です。
「もしかして…?」と思ったら、ぜひ一度、整形外科での画像検査を受けてみてください。
参考論文
- Risk Factors for Supraspinatus Tears: A Meta-analysis. Zhao J et al. Orthopaedic Journal of Sports Medicine. 2021. doi:10.1177/23259671211039130. PMID: 34660827
- Various risk factors for supraspinatus tendon tear: A case control study. Ahmad RG et al. Journal of Musculoskeletal Surgery and Research. 2022. doi:10.4103/jmsr.jmsr_104_21. PMID: 35060519
- Risk factors of tear progression in symptomatic small to medium full-thickness rotator cuff tears. Ko SH et al. Journal of Shoulder and Elbow Surgery. 2023. doi:10.1016/j.jse.2022.09.014. PMID: 36252783
- Investigating the multifactorial etiology of supraspinatus tendon tears. Lawrence RL et al. Journal of Orthopaedic Research. 2024. doi:10.1002/jor.25705. PMID: 37814893
- A Cross-Sectional Study on Novel-Risk Factors Associated with Supraspinatus Tendon Tears. Haveri S, Gawande J. Indian Journal of Orthopaedics. 2020. doi:10.4103/ortho.IJOrtho_220_19. PMID: 33927825
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)