慢性足関節不安定症
慢性足関節不安定症
慢性足関節不安定症(Chronic ankle instability ; CAI)とは
CAIとは、足関節捻挫後に残存する痛みを主訴とする足関節障害です。
新鮮足関節外側靭帯損傷の内10-30%がCAIに移行するといわれています。
その症状としては主に運動時の足関節部痛と足関節不安定感であり、捻挫を繰り返したり、関節症変化が進行したりすると歩行時でも痛みを生じるようになります。
慢性足関節不安定症の原因
後脛骨筋炎症や損傷に伴う機能不全が原因となることが多いです。
後脛骨筋腱機能不全症とは
中年以降の女性に好発します。
後脛骨筋とは、足関節内果後方と通り、舟状骨に一度付着し、その後は足底に回り込み楔状骨や中足骨基部に付着します。(図)
この腱は足の内側縦アーチの維持やつま先立ちをする際に必要です。
腱の機能不全により、舟状骨を支えられなくなり、内側縦アーチの低下、底側踵舟靭帯(ばね靭帯)などの破綻が生じ、外反扁平足になります。
慢性足関節不安定症の症状
初期では、内果周囲の痛みや歩容異常を伴いますが、病期が進行するにつれて足部の外反扁平足変形を伴います。
慢性足関節不安定症の検査
診断には内果の圧痛や痛み、後脛骨筋腱の腫脹、single heel rise test陽性(片足でつま先立ちできないか、疼痛を伴えば陽性)、toot many toes sign(後方から見た際に踵骨の外反を伴い、前足部の外転により外側の足趾が見えれば陽性:図)
画像診断
単純レントゲン検査
荷重位での撮影による足のアーチの低下、前足部の外転、踵骨の外反が見られます。
MRI検査
後脛骨筋腱の変性、断裂を認めます(MRI検査を行うことは稀です)。
慢性足関節不安定症の治療
症状のある外反扁平足に対して行われます。治療は保存治療が重要です。
アーチの維持や後脛骨筋腱への負担の軽減を目的とした安静や外固定、運動制限、靴の指導、アキレス腱のストレッチがあります。
また、足底挿入板などの装具(インソール)療法が行われます。
保存治療が効果不十分の場合は手術治療が選択されます。
リハビリテーションの方法は以下のように行います。
(図:下腿三頭筋のストレッチ(後足部の外反を矯正して行います)
(図:ゴムチューブを用いたトレーニング:後脛骨筋の作用である足関節を底屈して行います)
(図:内在筋のトレーニング:タオルギャザー.踵を浮かさないように足趾でタオルをたぐり寄せます)
(出典:嶋 洋明ら:足関節障害の診断とリハビリテーション MB Med Reha No.289, 2023)
医師より
前述のように、扁平足は後脛骨筋の機能不全によって発生することが多い疾患です。
治療の2本柱は運動療法(リハビリテーション)とインソールと思います。
多角的な治療を行うことで、足のお悩みを解決できればと思います。
参考文献
田崎 正和ら : 扁平足 整形外科看護 Vol.26 No.1, 2021.
嶋 洋明ら:足関節障害の診断とリハビリテーション MB Med Reha No.289, 2023
Evans,D.Calcaneo-valgus deformity.J Bone Joint Surg Br.57(3),1975,270-8.
Anderson,RB.et al.Calcanecuboid distraction arthrodesis for the treatment of the adult-acquired flatfoot:the modified Evans procedure.Foot Ankle Clin.1,1996,279-84.