前骨間神経麻痺
前骨間神経麻痺
前骨間神経麻痺とは
正中神経から分枝した前骨間神経が肘関節近傍(上腕遠位から前腕遠位)で何らかの原因で障害され、示指・中指の深指屈筋、長母指屈筋、方形回内筋に麻痺を生じる絞扼性障害の一つです。
障害の原因は、ガングリオンなどの占拠性病変、解剖学的に狭い部位での絞扼などの他、特発性麻痺もあります。
前骨間神経麻痺の原因
反復する前腕の回内・回外動作などによる神経炎が原因とする説が有力です。
前骨間神経麻痺の症状
母指IP関節(第一関節)と示指IP関節(第一、第二関節)の屈曲が不能となり、母指と示指で丸を作ろうとすると両関節が伸展し、tear drop signを呈します(図)。
(図)tear drop sign(左が患者)
出典:佐藤 和毅ら : 手根管・正中神経 整形外科看護 Vol.27 No.2, 2022
また、前骨間神経は感覚神経を含まないため、痺れ・感覚障害はありません。
前骨間神経麻痺の検査
臨床症状に加え、電気生理学的検査が補助診断として有効です。
MRIは占拠性病変の検索や萎縮筋の確認に有用です。
前骨間神経麻痺の治療
保存治療
発症後3-6ヶ月は患肢前腕の局所安静(過度の回内・回外を禁止)、ビタミンB12内服などで経過見ます。
手術治療
保存療法無効例には手術治療を検討します。手術は神経剥離術や長期経過例では腱移行術を行います。
参考文献
長野昭ほか.“基礎解剖学 正中神経”.整形外科手術のための解剖学 上肢.長野昭編.東京、メディカルビュー社、2000,16.
山部英行.“手根管症候群”.上肢臨床症候の診かた・考え方.玉井和哉ほか編.東京,南山堂,2016,230 ‒ 1.池口良輔.“手根管症候群”.手・肘の外科 診断と治療のすべて.岩崎倫政編.東京、メディカルレビュー社,2021,401 ‒ 4.池口良輔.“前骨間神経麻痺”.前掲書 3),404-5.