コラム
Column
その膝痛、原因は「太ももの外側」の張りかも？膝のお皿を解放する「腸脛靭帯ストレッチ」
こんにちは、桃谷うすい整形外科の瀬尾です！
「階段を降りるときに、膝の外側がズキッと痛む…」
「膝が突っ張るような感じで、スムーズに曲げ伸ばししづらい…」
「もしかして、変形性膝関節症の始まり…？と不安になる」
そのつらい膝の痛み、年のせいや軟骨のすり減りが原因だと諦めていませんか？ 実は、痛みの意外な犯人が、太ももの外側にある硬い「筋膜（腸脛靭帯）」の張りやこわばりであるケースは非常に多いのです。
この記事では、なぜ太ももの外側の硬さが膝痛を引き起こすのか、そのメカニズムと、膝を楽にするための簡単なストレッチを専門家の視点から解説します。
年のせいと諦めないで！膝痛の意外な犯人「腸脛靭帯」とは？
腸脛靭帯（ちょうけいじんたい）とは、骨盤の横から太ももの外側を通り、膝の下の骨まで繋がっている、非常に強靭で長い靭帯（筋膜）組織です。この腸脛靭帯は、歩行時やランニング時に膝の外側を支え、安定させる重要な役割を担っています。
しかし、お尻の筋肉が弱かったり、歩き方に癖があったりすると、この腸脛靭帯に過剰な負担がかかり、常に緊張した状態になります。すると、硬く張った腸脛靭帯が、膝の曲げ伸ばしのたびに膝の外側の骨と擦れ合い、摩擦によって炎症が発生。これが「腸脛靭帯炎」と呼ばれる、膝の外側の痛みの正体です。ランナーに多いため「ランナー膝」とも呼ばれますが、一般の中高年女性にも非常に多く見られます。
放置すると歩き方が歪み、股関節や腰痛の原因にも
膝の外側に痛みがあると、人は無意識にその痛みをかばうような歩き方になります。このような歪んだ歩き方を続けていると、今度は反対側の足や股関節に余計な負担がかかったり、骨盤のバランスが崩れたりして、股関節痛や腰痛といった「二次的な痛み」を引き起こす可能性があります。膝の痛みが、全身の歪みの連鎖を引き起こす前に、早めに対処することが重要です。
あなたの「太もも外側」は張ってる？指で押して硬さチェック
ご自身の太ももの外側が硬くなっていないか、チェックしてみましょう。
- 椅子に座り、脚の力を抜きます。
- 太ももの外側（骨盤の出っ張りから膝までの真ん中あたり）を、指でぐっと垂直に押してみてください。
「まるで硬いギターの弦のよう」「押すと響くような痛みがある」と感じる場合、腸脛靭帯がかなり緊張しているサインです。太ももの内側など、他の部分と硬さを比べてみると分かりやすいでしょう。
座ったままでOK！膝の外側を楽にする「腸脛靭帯ストレッチ」
硬くなった腸脛靭帯を緩め、膝への負担を減らすストレッチです。椅子に座ったまま安全に行えます。
- 安定した椅子の端に、少し浅めに座ります。
- 伸ばしたい方の脚を、反対側の膝の上に乗せます。（足を組むような形）
- 背筋は伸ばしたまま、乗せた方の膝を、手のひらで床の方向へゆっくりと、じわーっと押し下げていきます。
- お尻から太ももの外側にかけて、心地よく伸びるのを感じる位置で、深い呼吸をしながら30秒キープします。
- ゆっくりと元に戻り、反対側も同様に行います。
【ポイント】
痛みを感じるほど強く押す必要はありません。「イタ気持ちいい」と感じる範囲で、じんわりと圧をかけ続けるのがコツです。反動はつけず、息を止めないようにしましょう。
当院での治療法：痛みの原因に直接アプローチする専門的ケア
セルフケアを続けても痛みが改善しない、歩くのがつらいといった場合は、変形性膝関節症など他の疾患との鑑別も含め、専門家による正確な診断が重要です。
当院の理学療法士は、歩行分析（バイオメカニクス）の専門家です。お客様の歩き方や体の使い方を詳細に評価し、なぜ腸脛靭帯に負担がかかっているのか、根本原因を探ります。
- 徒手療法： 腸脛靭帯そのものに加え、その硬さの原因となっているお尻の筋肉（中殿筋や大腿筋膜張筋）の緊張を、専門家の手技で的確に緩めます。
- 運動療法と歩行指導： 痛みの原因となっている歩き方の癖を修正するためのトレーニングや、お尻の「怠け筋」を正しく使えるようにする運動を指導し、腸脛靭帯に負担のかからない体作りを目指します。
- インソール療法： 足の形（扁平足など）が原因で膝に負担がかかっている場合は、靴の中敷き（インソール）を作成し、足元から体全体のバランスを整えるアプローチも行います。
まとめ：膝痛は「太ももの外側」を伸ばして、賢く改善しよう
「年のせい」と諦めていた膝の痛みは、もしかしたら太ももの外側にある「腸脛靭帯」の硬さが原因かもしれません。放置すれば、股関節や腰など、全身に不調が広がる可能性もあります。
まずはご紹介した座ったままできるストレッチを試し、膝を解放してあげましょう。そして、もし痛みが続くなら、根本原因からアプローチする私たち専門家と一緒に、痛みのない快適な毎日を取り戻しましょう。
参考論文
- Khaund R, Flynn SH. Iliotibial band syndrome: a common source of knee pain. Am Fam Physician. 2005;71(8):1545-1550.
- Fredericson M, Wolf C. Iliotibial band syndrome in runners: innovations in treatment. Sports Med. 2005;35(5):451-459.
- Fredericson M, Cookingham CL, Chaudhari AM, et al. Hip abductor weakness in distance runners with iliotibial band syndrome. Clin J Sport Med. 2000;10(3):169-175.
- Aderem J, Louw QA. Biomechanical risk factors associated with iliotibial band syndrome in runners: a systematic review. BMC Musculoskelet Disord. 2015;16:356.
- Fredericson M, White JJ, MacMahon JM, Andriacchi TP. Quantitative analysis of the relative effectiveness of 3 iliotibial band stretches. Arch Phys Med Rehabil. 2002;83(5):589-592.
- Fairclough J, Hayashi K, Toumi H, et al. The functional anatomy of the iliotibial band during flexion and extension of the knee. J Anat. 2006;208(3):309-316.
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人
瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)
06-4392-7077