コラム
Column
夕方の「ゾウ足」は「ふくらはぎのSOS」! 第二の心臓を目覚めさせる、アキレス腱伸ばし&足首くるくるストレッチ
こんにちは、桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
「夕方になると靴がきつい…。足がパンパンにむくんで重だるい」
「足が冷えやすく、夜中にこむら返りで目が覚めることがある」
「マッサージをしても、次の日にはまた足がパンパンになっている」
多くの女性が日常的に悩まされている、つらい足のむくみ。その原因は、単なる水分の摂りすぎや塩分の問題だけではないかもしれません。実は、「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎの筋肉が、うまく機能していない「SOS」のサインなのです。
この記事では、なぜふくらはぎの機能低下が深刻なむくみを引き起こすのか、そのメカニズムと、ふくらはぎを目覚めさせる超簡単なストレッチを専門家の視点で解説します。
なぜむくむの?「第二の心臓」ふくらはぎのポンプ機能とは
心臓から送り出された血液は、重力に逆らって、脚の先から心臓へと戻らなければなりません。この時、力強いポンプの役割を果たすのが、ふくらはぎの筋肉です。
歩くたびに、ふくらはぎの筋肉がギュッと収縮し、血管を圧迫することで、血液を心臓へと押し戻します。これが「筋ポンプ作用」であり、ふくらはぎが「第二の心臓」と呼ばれる所以です。
しかし、運動不足や長時間の立ち仕事・座り仕事でふくらはぎの筋肉が硬くこわばってしまうと、このポンプ機能が著しく低下。結果として、脚に古い血液や余分な水分が溜まり、パンパンの「ゾウ足」状態になってしまうのです。
放置は禁物!むくみが招く「下肢静脈瘤」のリスク
慢性的なむくみを放置すると、見た目の問題だけでは済みません。脚の血流が常に滞ることで、血管(静脈)に大きな負担がかかり、血管の弁が壊れて血液が逆流してしまう「下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)」を引き起こすリスクが高まります。
下肢静脈瘤は、足の血管がボコボコと浮き出て見えるだけでなく、進行すると、重いだるさ、痛み、皮膚の色素沈着や潰瘍の原因にもなるため、早期の対策が不可欠です。
あなたのふくらはぎは大丈夫?「足首の角度」で柔軟性チェック
ご自身のふくらはぎの柔軟性をチェックしてみましょう。
- 壁の前に立ち、両手を壁につきます。
- 片方の足を大きく後ろに引き、かかとを床につけたまま、前の膝をゆっくり曲げていきます。
- この時、後ろの脚のふくらはぎが気持ちよく伸びるのを感じましょう。
「かかとがすぐに浮いてしまう」「アキレス腱あたりがつっぱって痛い」という方は、ふくらはぎの筋肉がかなり硬くなっている証拠です。
いつでもどこでもOK!ふくらはぎを蘇らせる「基本のストレッチ2種」
硬くなったふくらはぎをほぐし、ポンプ機能を回復させる、誰でも知っている基本のストレッチです。ポイントは「じっくり、丁寧に行う」こと。
1.アキレス腱伸ばし(腓腹筋ストレッチ)
- セルフチェックと同じ要領で、壁の前に立ち、片足を大きく後ろに引きます。
- 後ろの足の膝をピンと伸ばしたまま、かかとを床につけ、前の膝をゆっくり曲げていきます。
- ふくらはぎの上の方が伸びるのを感じながら、深い呼吸で30秒キープします。
- 反対側も同様に行います。
2.足首くるくるストレッチ
- 椅子に座るか、床に座って片膝を立てます。
- 足の指の間に、反対側の手の指をしっかりと組み込みます。
- その手でサポートしながら、「大きな円を描く」ように、足首をゆっくり、丁寧に、内外それぞれ10回ずつ回します。
- 反対側も同様に行います。
【ポイント】
アキレス腱伸ばしでは、勢いをつけずにじっくり伸ばすことが重要です。足首回しは、指先だけでなく「足首の関節」から動かすことを意識すると、より効果的です。
当院での治療法:血流改善と根本原因にアプローチ
セルフケアでもむくみが改善しない、足の血管が浮き出て見えるといった場合は、専門家にご相談ください。
当院の理学療法士は、足の構造から全身のバランスまでを評価し、なぜふくらはぎに負担がかかっているのかを分析します。
- 徒手療法とメディカルマッサージ: 専門家の手技により、硬くなったふくらはぎの深層筋や足裏の筋膜を効果的に緩め、血流を促進します。
- 運動療法と歩行指導: ふくらはぎのポンプ機能を正しく使えるような足首の運動や、足裏のアーチを支える筋肉のトレーニング、正しい歩き方を指導し、むくみにくい体作りをサポートします。
- 弾性ストッキングの指導: 症状によっては、医療用の弾性ストッキングの適切な選び方や履き方についてアドバイスすることもあります。
まとめ:足首ストレッチで「むくみ知らず」の軽やかな毎日を
つらい足のむくみや冷えは、「第二の心臓」であるふくらはぎが助けを求めているサインです。放置すれば、下肢静脈瘤などのリスクも高まります。
特別な運動は必要ありません。まずは、デスクワークの合間や寝る前の「アキレス腱伸ばし」と「足首回し」から始めてみてください。ふくらはぎのポンプ機能が目覚めれば、驚くほど足が軽くなるのを実感できるはずです。
参考論文
- Recek C. Calf pump activity influencing venous hemodynamics in the lower extremity. International Journal of Angiology 2013;22(1):23-30.
- O’Brien JA, Edwards HE, Finlayson KJ, Kerr G. Understanding the relationships between the calf muscle pump, ankle range of motion and healing for adults with venous leg ulcers: a review of the literature. Wound Practice & Research 2012;20(4):214-222.
- Hotta K, Behnke BJ, Arjmandi B, et al. Daily muscle stretching enhances blood flow, endothelial function, capillarity, vascular volume and connectivity in aged skeletal muscle. The Journal of Physiology 2018;596(10):1903-1917.
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)