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ひざの手術

knee-joint

ひざの手術

knee-joint

慢性的なひざの痛みについて

ひざの構造物について

図のように、膝関節には軟骨というものが存在します。
軟骨の厚みは2-4mm程で水分が80%もある非常に滑らかな組織です。
この軟骨が関節の表面を覆っているので、膝の屈伸運動をスムーズにする役割とクッションの役割を担っています。

この軟骨が、加齢や機械的刺激(運動、けが)によって経時的にすり減ってしまいます。
最終的に図のように関節の骨が変形(骨棘、骨嚢胞、骨硬化など)し、O脚やX脚になってしまいます。

また、関節は関節包という組織で包まれています。その関節包の裏側(膝関節内側)は滑膜組織という組織でできています。

滑膜組織とは、関節包を覆う薄い膜状の組織で、関節内の潤滑油となったり軟骨の栄養となったりする関節液を作り出す組織です。また、滑膜は血管と神経が豊富な組織の為、滑膜炎が発生すると膝に水が溜まり、強い痛みが発生することが多いです。

ひざの痛みはなぜ起きるの?

ひざの痛みを訴える方でもっとも多い疾患が、変形性ひざ関節症です。
国内の変形性ひざ関節症の罹患患者数は40才以上で2000-2500万人、人口の5人に1人と言われています。また、実際に痛みなどの症状がある患者数は800万人と言われています。

変形性ひざ関節症の痛みの原因

変形性ひざ関節症の痛みの原因は、主に以下の内容が原因となります。

一つ目は①軟骨がすり減り遊離した軟骨片と滑膜が反応する、その結果、滑膜の炎症が起きることで、強い痛みが発生します。(初期)
さらに進行すると軟骨が消失し、関節面に骨同士が露出して荷重時に接触します。
軟骨には感覚神経がないのですが、剥き出しになった骨の表面に感覚神経が増殖する(図2)
の結果、②荷重時に骨同士が接触し、感覚神経を直接刺激することで強い痛みが発生します。

症状例

  • 歩く時にひざが痛い
  • 階段の下りで特に痛い
  • 膝を動かすとゴリゴリ音が鳴る
  • 座った状態からの動き始めが痛い
  • 正座ができない
  • ひざに水が溜まって腫れる
  • O脚、X脚になってきた

代表的な疾患

当院の方針と特徴

まずは、投薬(痛み止め、湿布)とリハビリテーションから開始します。
変形の程度によってはヒアルロン酸注射を行います。
以上の方法で痛みを抑えた状態で、膝を守る筋力をトレーニングすることで、改善に向かう場合があります。それでも症状が取れない場合や、変形が高度で日常生活に支障を来たすような場合は、適切なタイミングで再生医療や手術などの方法をご提案します。

① 投薬治療

痛み止め

内服薬の中には、胃腸障害、腎機能障害、ふらつき、嘔気、便秘などといった他種の副作用が存在します。可能な限り副作用が発生しないような内服の方法や増減方法など、一人ひとりに合わせ、様々な内服薬を使った治療を行います。

ヒアルロン酸注射

出来るだけ丁寧、優しく注射します。注射後の痛みが改善している間に、理学療法士による筋力トレーニング指導を行い、出来るだけ長持ちするひざを目指します。

②リハビリテーション(運動療法)

当院では、一人ひとりの症状や日常生活レベル、求める活動レベルに合わせた、オーダーメイドでリハビリメニューを組み、膝だけでなく全身の機能回復を目指します。

③ 手術

前述のように、軟骨がすり減ると、骨の表面に神経が露出してきます(図1)。荷重がかかる毎に神経同士が接触し、疼痛が誘発されると言われています。

ひざの人工関節全置換術という手術は、すり減った軟骨や変形した骨の表面を削り、金属でできた人工関節をはめ込む手術です。(図3)

痛みの原因となる露出した骨表面を削り金属に置換するので、

  1. 徐痛効果が高いこと
  2. 0脚やX脚に変形した脚が、元の綺麗な真っ直ぐに戻ること
  3. 日常生活の歩行レベルが改善する

などの効果が期待できます。

近年では、徐痛効果を狙った周術期カクテル療法を使用して、手術後の痛みに関しては改善してきております。また、手術の際にコンピューターナビゲーションを使用することにより、より正確な手術が可能となっております。以前は人工関節の耐久性は10-20年と言われていました。しかし近年はインプラントの品質や手術手技の向上により、正しく手術を行えば20年以上問題なく使用することが出来ます。また、ゴルフや水泳、ダブルテニスなどの軽いスポーツ活動も可能となりました。

図3 インプラント(金属)/術前⇨術後のレントゲン

当院でのひざ手術について

関連病院で入院の後、人工ひざ関節術を行います。
当院の手術は、提携先病院にて当院院長が直接担当します。また、手術は予約制です。

人工ひざ関節単顆置換術

ひざ関節の内側か外側の損傷が激しい部分のみ、人工関節に置き換える方法です。

人工ひざ関節全置換術

ひざ関節全体を人工の関節に置き換える手術です。

当院で行う人工ひざ関節置換術の特長

疼痛コントロール

術後の痛みのコントロールとして、多剤併用カクテル療法を併用します。手術によって侵襲を加えた局所に、直接痛み止めやステロイドなどといった炎症を抑える薬剤を注射することで、痛みを和らげる治療を行います。

豊富な症例実績

人工ひざ関節の手術経験やそれに伴う知見を培ってきました。一番大切なことは、本当に手術が必要かどうかを見極めることあると考えてます。過去の経験や科学的根拠を基に、手術によって痛みや変形が改善する見込みがあると考えられる患者さんに手術を勧めさせて頂きます。

手術実績のある関連病院で手術

人工関節の手術は術者だけでなく、手術室の看護師の技術、手術室の清潔管理、術後病棟での細かな安全性の管理(頻回のバイタルや創部、血流、痛みのチェック等)といった、多業種の医療技術の積み重ねの上に、安全性が成り立っています。手術をする際は、豊富な手術件数を有した人工関節センターにて手術を行います。

退院後の充実したフォローアップ

関連病院を退院後、当院にて生涯フォローアップさせて頂きます。必要であれば、術後の通院リハビリテーション、ひざ専門の理学療法士によるリハビリテーションを受けていただくことが出来ます。

関連記事

参考文献

・阿漕 孝治ら : 変形性関節症の痛みの機序 医学のあゆみ Vol.278 No.1, 2021.(図の論文)
・Aso K. Arthritis Res Ther 2021;23(1)35. (滑膜炎→痛みの論文)
・Aso K. OsteoArthritis Cartilage 2020;28(9):1245-54(骨表面に感覚神経が増殖するという論文)
・國分 将道ら : 人工膝関節全置換術(TKA) 整形外科看護 Vol.28 No.9, 2023.(図の論文)

よくあるご質問

FAQ

Q.人工関節置換術を受けられる年齢は?
A.

一般的には85歳程度までは手術可能と考えられています。
心臓や肺、その他の臓器の状態を考慮して手術可能かどうかを決定します。ですので、90歳以上の方でも全身状態が良好と判断されれば、手術を受けることは可能です。本邦の人工ひざ関節全置換術を受けられる患者様の平均年齢は73.0歳です。(社会保険庁2008年データ)

Q.手術はどのくらいの時間がかかりますか?
A.

患者様のひざの変形の程度にもよりますが、手術時間は約60-90分です。手術室への入室から病棟に戻るまでの時間の目安は概ね2-3時間となります。

Q.手術後、すぐに歩けますか?
A.

手術翌日から全ての体重をかけた状態での歩行練習を開始します。歩行練習は理学療法士と共に行います。術後のリハビリテーションの内容は主に①歩行練習、②可動域訓練、③日常生活動作の獲得です。これらの目標が達成できれば退院可能となります。退院の目安は片膝で術後1ヶ月、両膝で1.5ヶ月程度です。

Q.人工関節の寿命はどのくらいですか?
A.

耐用年数は一般的に15-20年程度と言われています。手術後20年が経過した段階で6人に1人程度と報告されています。ただし、関節の変形の程度、活動性が高いかどうかなどにも影響を受けます。動きの激しいスポーツや禁じられている動作を行なったりすると、人工関節の緩みや摩耗が出やすくなり、耐用年数は短くなってしまいます。ですので、出来るだけ長持ちさせられるように気をつけていただくことが大切です。

Q.手術後、どのようなスポーツができますか?
A.

動きの激しいスポーツを行うと、早期に緩む危険性があります。
キーワードは①衝撃が少ないこと、②手術前に経験していた運動 が許可されています。

○ 行なっても良いスポーツ

サイクリング(屋内固定型)、ボウリング、ゴルフ、ダンス、乗馬、クロケット、ウォーキング、水泳、射撃

✖️ 行ってはいけないスポーツ

ロッククライミング、サッカー、テニス(シングル)、バレーボール、フットボール、ホッケー、バスケットボール、ジョギング、ハンドボール

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