コラム
Column
股関節外側の痛みを正しく理解しよう!〜運動器超音波による評価〜

皆さん、こんにちは。桃谷うすい整形外科の瀬尾です。
先日、運動器超音波Lab主催の勉強会を開催しました。今回のテーマは『股関節外側』について。
日頃、「股関節の外側が痛い」と訴える患者様は多くいらっしゃいますが、実はその原因は一つではありません。今回の勉強会では、股関節外側の痛みの原因となる構造について、運動器エコーを使いながら詳しく説明をしました。
医療従事者向けの内容ではありますが、今回は一般の方にもわかりやすく、股関節外側の痛みについて解説したいと思います。
股関節外側の痛みって、どこが原因?
股関節の外側の痛みは、歩く時や階段を上る時、寝返りを打つ時など、日常生活の様々な場面で現れることがあります。
今回の勉強会では、特に以下の3つの重要な構造について学びました:
- 小殿筋(しょうでんきん)
- 関節包(かんせつほう)
- 上殿動脈(じょうでんどうみゃく)
それぞれがどのような役割を持ち、どのようなトラブルが起こりやすいのか、順番に見ていきましょう。
1. 小殿筋(しょうでんきん)

◎ 構造について
小殿筋は、股関節の深い部分にある筋肉です。大殿筋や中殿筋の下に隠れているため、触診では直接触れることができません。
◎ どんなトラブルが起こる?
- 筋肉の炎症:使いすぎや急激な負荷により、筋肉自体に炎症が起こることがあります
- 腱の変性:加齢とともに、筋肉が骨に付着する部分(腱)が傷みやすくなります
◎ 痛みの特徴
「股関節の外側から少し後ろ側にかけて痛い」「長く歩くと痛みが強くなる」といった訴えが多く聞かれます。
2. 関節包(かんせつほう)

◎ 構造について
関節包は、股関節全体を包み込む袋状の組織です。関節の安定性を保ち、関節液を保持する重要な役割を持っています。
◎ どんなトラブルが起こる?
- 関節包の肥厚:繰り返される炎症により、関節包が厚くなることがあります
- 関節包の癒着:動かさないでいると、関節包が硬くなり動きが悪くなります
- 関節包の炎症:外傷や使いすぎにより、炎症を起こすことがあります
◎ 痛みの特徴
「股関節を曲げると詰まった感じがする」「朝起きた時に股関節が硬い」といった症状が現れやすいです。
3. 上殿動脈(じょうでんどうみゃく)

◎ 構造について
上殿動脈は、お尻の筋肉に血液を供給する重要な血管です。骨盤から出て、殿筋群の間を走行しています。
◎ どんなトラブルが起こる?
- 血流障害:姿勢不良や筋肉の緊張により、血流が悪くなることがあります
- 血管周囲の炎症:周囲の組織の炎症が血管に影響することがあります
◎ 症状の特徴
「じっとしていても重だるい」「夜間に痛みが強くなる」といった血流に関連した症状が現れることがあります。
超音波エコーでわかること
今回の勉強会で最も印象的だったのは、これらの構造をリアルタイムで観察できることでした。
従来のレントゲンでは骨しか見えませんが、超音波エコーを使うと:
- 筋肉の状態(腫れや損傷の有無)
- 腱の厚さや変性の程度
- 血流の状態
- 動かした時の組織の動き
これらすべてを、その場で確認することができます。
特に「動かしながら見る」ことができるのは、超音波エコーの大きな利点です。患者様に実際に痛みが出る動作をしていただきながら観察することで、どの組織が痛みの原因になっているかを特定しやすくなります。
実技講習で学んだこと

講義の後は、参加者全員で実技講習を行いました。2台のエコー機器を使用し、実際にプローブを当てながら、講義で学んだ構造を描出する練習をしました。
理学療法士、医師、鍼灸師、トレーナーなど、様々な職種の方々が参加され、それぞれの視点から活発な意見交換が行われました。同じ「股関節の痛み」でも、職種によってアプローチの仕方が異なることを学び、大変勉強になりました。
股関節の外側が痛い時は
股関節外側の痛みは、今回ご紹介した小殿筋、関節包、上殿動脈以外にも、様々な原因が考えられます。大切なのは、痛みの原因を正確に把握することです。
以下のような症状がある場合は、早めの受診をお勧めします:
- 歩行時に股関節外側に痛みがある
- 横向きで寝ると股関節が痛む
- 階段の昇り降りで股関節に痛みを感じる
- 股関節の動きが悪くなってきた
- 安静時にも股関節に違和感がある
当院では、運動器エコーを用いた詳細な評価を行い、痛みの原因を特定した上で、最適な治療プランをご提案しています。
まとめ
今回の勉強会を通じて、股関節外側の痛みの評価には、解剖学的知識と超音波エコーの技術の両方が重要であることを改めて実感しました。
私たち医療従事者は、常に最新の知識と技術を学び続けることで、患者様により良い医療を提供できるよう努めています。今回学んだ内容を日々の診療に活かし、股関節の痛みでお困りの患者様のお役に立てるよう、精進してまいります。
股関節の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。痛みの原因を一緒に見つけ、改善への道筋を立てていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回予告
来月の運動器超音波Labセミナーでは『腰部について』を予定しています。ご興味のある医療従事者の方は、ぜひご参加ください。初心者の方も大歓迎です!
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)