コラム
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【理学療法士が正座を勧めない理由】半月板への負担と膝へのリスクとは?

こんにちは。桃谷うすい整形外科の瀬尾です!
日本の伝統的な座り方である正座。茶道や仏事、日常生活の中でも正座をする機会は多く、日本人にとって馴染み深い姿勢です。しかし、膝関節に痛みや違和感を感じている方にとっては、正座が症状を悪化させる可能性があります。
今回は、理学療法士が正座を勧めない理由について、半月板への負担や膝関節へのリスクを中心に、国内外の研究を交えて解説いたします。
正座が膝関節に与える影響
正座は、膝を深く曲げて体重をかける姿勢であり、膝関節に大きな負担がかかります。特に、膝を完全に屈曲させることで、半月板が大腿骨と脛骨の間で圧迫されやすくなります。
このような姿勢を長時間続けると、半月板の後方部分(特に内側)にストレスが集中し、損傷のリスクが高まるとされています。
半月板への影響とそのリスク
半月板は、膝関節内でクッションの役割を果たし、衝撃を吸収する重要な構造です。しかし、正座のような深い屈曲姿勢では、半月板の後方部分が繰り返し圧迫されることで、変性や損傷が生じやすくなります。
特に、内側半月板の後根部(posterior root)は、正座時に強い圧力がかかる部位であり、損傷が発生しやすいと報告されています。
内側半月板後根断裂(Medial meniscus posterior root tear:MMPRT)

Moon, H.-S. et.al Medicina 2023, 59, 1181.
国内外の研究から見る正座の影響
いくつかの研究では、正座や深い膝の屈曲が半月板に与える影響について報告されています。
- Injury patterns of medial meniscus posterior root tears
深い膝の屈曲が、内側半月板後根部の損傷パターンに関連していることが示されています。 - Is greater than 145° of deep knee flexion under weight-bearing conditions safe after total knee arthroplasty?
日本式の深い膝の屈曲(正座)時に、膝関節にかかる負荷が増加し、特定の部位にストレスが集中することが示されています。
理学療法士が正座を勧めない理由
上記のような理由から、理学療法士は以下の点を考慮して、患者様に正座を控えるよう指導することがあります。
- 半月板への過度な圧迫:正座により半月板が圧迫され、損傷のリスクが高まる。
- 膝関節への負担増加:深い屈曲姿勢が膝関節に過度なストレスを与える。
- 症状の悪化:既存の膝の痛みや違和感が正座により悪化する可能性がある。

Nakazoe et al. Journal of Orthopaedic Surgery and Research (2022) 17:192
膝に優しい座り方の工夫
膝への負担を軽減するためには、以下のような座り方を取り入れることをお勧めします。
- 椅子を使用する:床に直接座るのではなく、椅子を使用して膝の屈曲を避ける。
- 足を伸ばす:座る際に足を前方に伸ばし、膝の曲げを最小限にする。
- クッションを使用する:膝の下にクッションを置いて、圧迫を和らげる。
まとめ
日本の文化に根付いた正座ですが、膝関節、特に半月板への負担を考慮すると、膝に痛みや違和感がある方には控えることをお勧めします。日常生活の中で膝への負担を軽減する工夫を取り入れ、膝の健康を守りましょう。
JR桃谷駅西口出てすぐの天王寺区、生野区から通院しやすいクリニック「桃谷うすい整形外科」では、質の高い医療を提供し、患者さんの問題解決に全力で取り組み、医療者全員が協力して前進し続けることを目指しています。
このコラムを書いた人

瀬尾 真矢
患者様一人ひとりの日常生活やスポーツ復帰を支援するために、適切なリハビリプログラムを提供し、患者様が自信を持って活動できるようサポートいたします。また、痛みや不快感に真摯に向き合い、最善の方法で症状を軽減し、再発予防にも力を入れてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
得意分野
変形性関節症(人工関節術後)、肩関節疾患(保存療法、術後)
スポーツ障害(肩関節、膝関節、足関節)