高尿酸血症・痛風
高尿酸血症・痛風
高尿酸血症・痛風(関節炎)とは
性別、年齢を問わず血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超える状態を高尿酸血症と言います。
男性に多く、成人男性の頻度は25%にもなります。
高尿酸血症・痛風の原因
尿酸はプリン体の最終代謝産物で、肝臓で作られ、腎臓(70%)と消化管(30%)から排泄されます。血清尿酸値は、通常この産生と排泄のバランスが保たれています。
高尿酸血症の患者さんでは、この産生が過剰になるか、排泄が低下するかによって引き起こされます。ちなみに、日本人は約8割が排泄低下型であると知られています。
高尿酸血症・痛風の症状
大部分は症状がないのですが、関節に沈着すると痛風関節炎(足の母趾の付け根(MTP関節)に頻発)皮膚に沈着すると痛風結節を引き起こします。
また、尿酸の濃度が上昇すると尿路結石を合併することがあります。
出典:日本整形外科学会ホームページ「痛風」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/gout.html
高尿酸血症・痛風の検査
痛風の診断は、高尿酸血症が持続した結果、関節内に析出した尿酸塩が引き起こす関節炎のことであり、米国リウマチ学会の診断基準を参考し診断します。(図)
図:痛風関節炎の診断基準(米国リウマチ学会)
出典:原田 大ら : 高尿酸血症、痛風 薬局 Vol.73 No.4, 2022.
しかし、発作中の血清尿酸値は必ずしも高値を示すわけでないので注意が必要です。
高尿酸血症・痛風の治療
治療は ①痛風関節炎に対する治療と、②高尿酸血症に対する治療に分けられます。
痛風関節炎に対する治療
短期間であるが疼痛が激しいため、疼痛を取り除くことが治療目標になります。
高尿酸血症に対する治療
尿酸塩の沈着を予防し痛風関節炎や腎障害などを回避することです。
尿酸降下療法による血清尿酸値の目標は、6.0mg/dL以下に下げることです。
痛風発作をきたしている患者さんには、まず疼痛に対する治療を行い、発作が沈静化してから尿酸降下療法を開始します。
また、症状のない高尿酸血症の方でも、血清尿酸値8.0mg/dL以上であれば、尿酸降下療法を開始するべきと言われています。
生活習慣の改善
- プリン体摂取量 400mg以下/日
(動物の内臓、魚の干物、乾物などは高プリン食と呼ばれていますので、まずこれらを控えましょう) - 飲酒制限(日本酒1合、ビール500ml、ウイスキー60ml/日以下に)
- 運動(毎日継続できる軽い有酸素運動)
- 飲水(2L/日以上)
当院での治療方針
当院での薬物治療は以下のようになります。
痛風に対する治療
前兆期
痛風発作の前兆期には、コルヒチンを1日1錠経口投与します。出来るだけ早期に使用します。
極期
痛風発作の極期には消炎鎮痛薬(ロキソニンなど)を7-10日間だけ大量に投与します。
ワーファリン内服中の方にはステロイドを用いることがあります。
高尿酸血症に対する治療
発作が沈静化して約2週間経過してから尿酸降下薬を開始します。血清尿酸値を急激に低下させると痛風関節炎をしばしば誘発させるので、尿酸降下薬は少量より開始し、3-6ヶ月かけて目標値(6mg/dL)までゆっくり下げます。
予防など
メタボリック症候群と高尿酸血症
痛風患者さんは年々増加しており、食生活の欧米化が原因と言われています。
また、糖尿病に特徴的なインスリン抵抗性が上がると、高インスリン血症による腎臓での尿酸の排泄が困難になるためと言われています。ですので、生活習慣病の予防が高尿酸血症の予防に直接繋がります。
参考文献
原田 大ら : 高尿酸血症、痛風 薬局 Vol.73 No.4, 2022.
日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン改訂委員会 編:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版.診断と汁療社,2018.