頚椎椎間板ヘルニア
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎椎間板ヘルニアとは
首の骨は頚椎と呼ばれ、7つあります。(図)
図:頚椎の構造と椎間板ヘルニア
出典:今泉 佳宣ら : 頚椎椎間板ヘルニア 整形外科看護 Vol.17 No.4, 2012.
頚椎の椎体と椎体の間には椎間板と呼ばれる軟骨があります。
椎間板を構成する髄核という組織が脱出し、頸髄や頸部神経根を圧迫して症状を引き起こす疾患を頚椎椎間板ヘルニアと言います。
「ヘルニア」という言葉は「飛び出す・脱出する」という意味です。
頚椎椎間板ヘルニアの原因
ラグビーやアメリカンフットボールといったコンタクトスポーツを行なっている若年者に生じることもありますが、多くは40歳以降の中高年に生じます。
加齢によって椎間板に老化現象と言える変性を生じ、変性を生じた椎間板に繰り返し力学的負荷が加わると、椎間板を構成する繊維輪に亀裂が生じ、そこから髄核が脱出します。(図)
出典:今泉 佳宣ら : 頚椎椎間板ヘルニア 整形外科看護 Vol.17 No.4, 2012.
頚椎椎間板ヘルニアの症状
椎間板ヘルニアが頸髄と呼ばれる脊髄を圧迫すると、手足の痺れや手指の運動障害、歩行障害、排尿障害といった症状が起きます。これを頸髄症と言います。
また、ヘルニアが頸部神経根を圧迫すると、片側の上肢の痛み、痺れ、運動障害や肩甲骨付近の痛みを生じます。これを頸部神経根症と言います。
出典:今泉 佳宣ら : 頚椎椎間板ヘルニア 整形外科看護 Vol.17 No.4, 2012.
頸部神経根症の特徴的なものとして、上肢の痛みは痺れがなく、運動障害だけを認めるものもあります。(Keegan麻痺)
頚椎椎間板ヘルニアの検査
確定診断はMRIです。MRIによって、椎間板ヘルニアの有無を確かめること、ヘルニアの部位、大きさ、頸髄傷と神経根症の鑑別ができます。
頚椎椎間板ヘルニアの治療
頚椎椎間板ヘルニアによって神経根症を起こしている場合は、まず保存治療を行います。
保存治療として、装具療法や薬物療法が挙げられます。保存治療が有効な場合、3ヶ月以内に症状は軽快します。3ヶ月の保存治療が無効な神経根症や頸髄症を認める場合は手術を勧めます。
頚椎椎間板ヘルニアの予防
頚椎椎間板ヘルニアは加齢により椎間板が変性することが原因で発症するケースが多いです。
どなたも年齢を重ねるために、加齢による変性は防ぐことができません。
しかし、以下のポイントに注意することで頚椎椎間板ヘルニアの予防につながると考えられます。
- 見上げる、首を後ろにそらすなどの動作(首の後傾動作)を控える
- スマホを見るときは俯かずに首を引いてみる(猫背にならないように意識する)
- 急に重いものを持ち上げたり、首に過度の負荷がかかる動作を控える
- 肩周りのストレッチをして、肩周りの柔軟性をつける
医師より
MRI検査にて頸髄症を認める場合、出来るだけ早期に手術を行ったほうが良いという考えもあります。その理由は、脊髄の圧排された状態が長く続けば、脊髄の神経細胞の一部が壊死してしまい、脊髄が回復不能な状態となってしまうからです。ですので症状の程度や圧排部位によっては早期に提携先の医療機関に紹介させて頂くことがあります。
参考文献
今泉 佳宣ら : 頚椎椎間板ヘルニア 整形外科看護 Vol.17 No.4, 2012.
谷戸祥之.“ 頚椎椎間板ヘルニア ”.脊椎・脊髄.千葉一裕ほか編.東京,羊土社,2008,78-82,(整形外科専門医になるための診療スタンダードシリーズ,1).