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野球肘

野球肘

野球肘とは

繰り返す投球動作によって生じる肘障害の総称のことで、その多くが10歳代の成長期の子どもに発症します

投球によるストレスとしては、ボールを話す瞬間、肘の内側に引っ張られる力が加わり、外側には衝突が起こります。外側で衝突が起きる際、圧迫力、剪断力(引っ張られる力)、回旋力といった複雑な力が加わります(図)。

外反ストレス。内側の野球肘、外側の野球肘、後方の野球肘

出典:丸山真博ら : 野球肘 整形外科看護 Vol.26 No.11, 2021.

野球肘の原因

子供と大人の身体の違い

子供とは、成長途中の成長軟骨が存在する中学3年生以下くらいの年齢で、大人とはそれより上の成長が止まった、成長軟骨がなくなった(骨端線が閉鎖した)状態を言います。

成長期の子供の肘には成長軟骨があり、骨化過程の軟骨も多く存在しています。
肘の中で最も弱い部分(子供の場合は成長軟骨)が痛めやすく、成長の過程で力学的に弱い場所=痛めやすい場所が変わります。

成長軟骨が残っている子供では、最も弱い部分が骨端であるため、骨軟骨の障害が多く、一方、骨端線が閉鎖した大人では、最も弱い部分が靭帯や腱などの軟部組織やその付着部に変わります。その結果、大人では軟部組織の障害が多くなります。

野球肘の症状

実は日常生活での痛みを訴える選手は少なく、そのほとんどが投球時の疼痛です。
ひどくなってくると可動域制限が出現することもあります。

野球肘は障害部位によって①内側型 ②外側型 ③後方型の3つに分けられます。

内側型

成長期に特に多いのが「内側」の障害です。
内上顆の靭帯付着部の骨・軟骨が一部剥がれてしまうことで生じます。関節内を動くネズミとは異なります。骨癒合しないと将来陳旧性内側側副靱帯損傷に陥ると言われています。また、癒合しても肘にストレスを増やさないように投球を続けないと再発することもあります。

外側型

多くは上腕骨小頭離断性骨軟骨炎と呼ばれるものです。肘の外側にある上腕骨小頭の骨軟骨の一部が剥がれてしまう障害です。外側障害の問題点は、悪化すると変形性肘関節症に至り、野球だけでなく日常生活にも影響を及ぼし、将来にわたり障害を残す可能性があるということです。内側の障害と異なり、長期間投球禁止を余儀なくされ、手術が必要となることも多いのが特徴です。

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎

出典: 仲 拓磨ら: テニス肘と野球肘は何が違う? : 野球肘 整形外科看護 Vol.29 No.1, 2024.

後方型

成長期には尺骨肘頭の骨端線が閉鎖しないで開いたままになる肘頭骨端線離開となります。骨端線が閉鎖した成人では肘頭疲労骨折となります。つかなかった骨端線や疲労骨折は投球時の疼痛を引き起こします。

野球肘の検査

レントゲン検査、MRI検査、超音波エコーの検査が有用です。

野球肘の治療

保存治療

投球を継続することで変形性肘関節症へ進行してしまう上腕骨小頭離断性骨軟骨炎をのぞき、野球肘の治療の原則は保存治療です。

野球肘の保存治療は投球禁止が主体です。疼痛、炎症が強い時期は固定処置が必要となることもありますが、投球禁止のみでほとんどの疼痛が改善します。
投球禁止の間、走塁、打撃は痛みがなければ許可します。

投球は全身運動です。下肢(特に股関節)、体幹、肩のエネルギーを十分使うことにより、肘関節への負担は減らせます。投球過多になると肩、体幹、下肢が硬くなり、うまく動かせなくなります。

手術治療

上腕骨離断性骨軟骨炎

初期で見つかれば投球禁止により自然回復が期待できます。
しかし、保存治療が奏功し、病巣が修復された場合でもスポーツに完全に復帰するには1~1年半の長い投球禁止期間が必要となるため、成長期の短い野球活動への影響は計り知れません。

また、病状が進んでしまった進行期の場合、保存治療ではほとんど治癒は期待できないため、手術治療を勧めます。

医師より

早期発見のために

野球肘を発見するために簡便な方法があります。

野球肘を発見する方法
出典:松浦 健司 :第5回 野球肘 整形外科看護 Vol.19 No.1, 2014.

a. 手のひらを上に向けて肩の高さで両腕を前に伸ばす、肘から先の角度に左右左がないかチェック(伸びない)
b. 肩の高さで肘を曲げて曲がる角度に左右さがないかをチェック(曲がらない)

この可動域制限チェック方法で左右差があれば可動域制限がるということなので、早期に専門病院受診をお勧めします。障害の初期は痛みがないことが多いですが、投球時の僅かな痛みを訴えたり、可動域制限がなくても肘周囲を押さえて痛みに左右さがあればすぐに受診させるべきでしょう。保護者・指導者は野球肘の第一発見者になれることを覚えておきましょう。

当院での治療方針

保存治療では、投球禁止や投球制限をします。
リハビリテーションでは肩関節、股関節、体幹のストレッチを行います。

野球肘の予防

野球肘発症の原因は、投球過多と不良な投球フォームが挙げられます。
不良な投球フォームは「投げすぎ」による筋疲労の影響が大きいため、発症を予防するためには投球数制限が必要です。
日本臨床スポーツ医学会では、小学生では1日50球を超えないこと、1日2試合の登板や連日の試合を禁止することが提唱されています。

参考文献

高松 晃ほか:“ 肘関節の画像診断 ”.肩と肘のスポーツ障害:診断と治療のテクニック.菅谷啓之編.東京,中外医学社,2012,59-70.
松浦 健司ほか:野球肘の観血的療法(適応と限界).MB Orthopaedics.2008,21(13),45-54.
松浦 健司ほか:骨釘・骨軟骨柱移植(Mosaic Plasty)による治療.臨床スポーツ医学.2011,28(5),529-35.
松浦 健司ほか:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎.臨床スポーツ医学.2012,29(8),855-62. 5)日本臨床スポーツ医学会整形外科学術部会編.野球障害予防ガイドライン.東京,文光堂,1998,219.
仲 拓磨ら: テニス肘と野球肘は何が違う? : 野球肘 整形外科看護 Vol.29 No.1, 2024.
丸山 真博ら : 野球肘 整形外科看護 Vol.26 No.11, 2021.

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