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胸郭出口症候群

胸郭出口症候群

胸郭出口症候群とは

腕神経叢部分で起こる圧迫性神経・血管障害の総称です。

解剖

胸郭出口とは、最も近位では前・中斜角筋から、第一肋骨、鎖骨、小胸筋、大胸筋などで構成される神経血管束の通り道です。
この部分で圧迫される神経血管束とは鎖骨下動脈、静脈、腕神経叢の3つを指します。(図)
何らかの原因でこの部分の神経血管束が圧迫され、神経・血管症状が出現します。

胸郭出口症候群の原因

動的要素が関与して発症します。第一肋骨は呼吸と一緒に、前中斜角筋は頚椎と一緒に、鎖骨と大胸筋、小胸筋は上肢と一緒に動きます。
神経血管束のトンネルは通常では頚椎や上肢の動きとともに狭くなったり、広くなったりしますが、通常は圧迫が生じないように余裕があります。
しかし、胸郭出口症候群の例ではこれらの動きと共に、特に上肢の挙上、肩の外転、外旋の動きによってこのトンネルが顕著に狭くなってしまいます。

現在報告されているものに、

  1. 解剖学的破格:第7頚椎の横突起が肋骨のように大きくなったもの=脛肋
  2. 体型:なで肩の女性 or 筋骨隆々タイプの男性に多いと言われています
  3. 職業的負荷:手を挙上して作業する職業(自動車修理、電気工事など)
  4. 肩関節疾患(動揺肩)

があります。しかし、顕著な解剖学的異常を持ちながら発症しない例もあり、不明点が多いのも事実です。

胸郭出口症候群の症状

自覚症状は傷害される組織(神経か血管か)と部位によって多彩です。
上肢の疼痛、痺れ感、倦怠感、易疲労性、知覚鈍麻、握力低下、冷感、嘔気、頭痛などが挙げられます。
これらの症状が手の使用によって悪化することが特徴ですが、進行すると常時出現します。
これらの症状のうち疼痛と異常知覚は95%に出現すると報告されています。

胸郭出口症候群の検査

他覚所見は非常に捉えにくいことが特徴です。その中で誘発テストとして、以下のテストを行います。

Wright テスト

肩関節を90度外転外旋位とし、肘関節を90度屈曲位に保持し、橈骨動脈の拍動が消失すれば陽性です。最も陽性率が高い検査です。しかし、症状を有しない人の15%陽性率があるため注意を要します。

Roosの3分間テスト

両肩を90度外転外旋位とし、その位置で指の屈曲伸展を繰り返し行わせ、3分以内に続けられなくなった場合は陽性とします。

画像検査

単純レントゲン検査で脛肋の存在、J字型第一肋骨が観察されます。
他に、電気生理学検査や血管造影、腕神経叢造影検査などがありますが、確定診断になりえるかは意見が分かれるところです。

胸郭出口症候群の治療

保存療法

発症すれば必ず進行するわけではないため、特別な社会的要因がなければ、まず保存治療が施行されます。

  1. 日常生活指導
    可能な限り手を挙上する動作を避けるように指導します。
  2. 肩周囲筋強化
    僧帽筋、肩甲挙筋、大菱形筋、前鋸筋などの筋力強化を6ヶ月行い、肋鎖間隙の開大と姿勢の矯正を行います。
  3. 薬物療法

手術療法

保存療法で長期間改善しない場合、症状が強い場合は選択されます。

胸郭出口症候群の予防

なで肩による胸郭出口症候群を改善するには、姿勢の注意や体操療法のほかに日頃から体に負担をかけない工夫が大切です。
例えば、重い荷物は腕が引っ張られて症状が悪化する可能性があるので、出来るだけ避けて肩に負担が掛からない工夫をしましょう。

医師より

医師より
院長

本疾患は、現在でも診断に難渋する疾患と言われています。
心因性を含め類似症状をきたす様々な周辺疾患を間違って治療する危険性があります。自覚症状のみからの性急な診断による治療開始は控えるべきであり、専門機関での精査・治療が必要と考えております。

参考文献

斎藤 貴徳ら : ズバリとわかる運動位疾患の病態生理 胸郭出口症候群   整形外科看護 Vol.10 No.4, 2005.
Roos,DB. Experience with first rib resection for thraric outlet syndrome. Ann Surg. 173, 1971, 429-42.
高木克公ほか:胸郭出口症候群の手術成績.整形外科.37,1986,157-160

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