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椎間板性腰痛

椎間板性腰痛

椎間板性腰痛とは

椎間板は椎体の間のクッションの働きをしています。

  • 外層は硬い同心円状のコラーゲン繊維からなる層(繊維輪)
  • 内層は柔らかいゲル状の層(髄核)

で構成される2層構造になっています。(図1)

椎間板の構造

図1:椎間板の構造
出典:青木 保親ら 椎間板性腰痛の診断と治療  MB Orthop. 36(9) : 17-24, 2023.

椎間板は元々、外層の繊維輪の最外側にしか神経が存在しません。

急性腰痛の場合

継続的な負荷や大きな衝撃が椎間板にかかると、椎間板が断裂します。
その際に、断裂が繊維輪の最外側に達した場合のみ、急性腰痛が発症します。

慢性腰痛の場合

その後、断裂した椎間板の修復過程で瘢痕組織が形成されます。その瘢痕組織に神経の侵入が起こり、過敏化して痛みが持続すると言われています。(図2)

椎間板性腰痛の発生メカニズム

図2:椎間板性腰痛の発生メカニズム
出典:青木 保親ら 椎間板性腰痛の診断と治療  MB Orthop. 36(9) : 17-24, 2023.

椎間板性腰痛の原因

正常な椎間板では生理的なクッション機能が維持されている事により、椎間板全体に均等に圧がかかり、特定の部位に圧が集中することはないのですが、変性椎間板(加齢に伴う)では圧が不均等にかかり椎間板の一部に強い圧が集中してしまいます。
さらに椎間板過敏化にクッション機能低下が加わると、通常の体重負荷でも椎間板が強い痛みを感じる状態になってしまいます。

椎間板性腰痛の症状

椎間板の内圧は臥位<立位<座位の順に高くなります。さらに前屈位で最も高くなります。
また、稀に鼠径部や大腿部などに広がる場合もあります。

椎間板性腰痛の検査

以上から、前屈位、座位で増強する腰痛を確認します。Finger floor distance(FFD)を測定します。

図: Finger floor distance(FFD) 腰椎最大前屈位における指先と床との距離を測定する

単純X線

椎間板高低下や、前屈時の椎間広報開大などは椎間板変性・機能障害を示す所見です。

図:△に比べて、⇨の椎間板高が低下している

MRI

変性した椎間板では、髄核の輝度が低下するのを確認できます。また、一旦低下した輝度は改善しません。

図:変性した椎間板(△に比べて、⇨は輝度が低下する(椎間板が黒くなる))

椎間板造影と椎間板ブロック

椎間板性腰痛のgold standardとされる診断方法は椎間板造影と椎間板ブロックです。
椎間板内に穿刺針を進め造影剤を注入した際に普段の腰痛が再現されれば陽性となります。

椎間板性腰痛の治療

多くの場合は安静により症状が経過し、1-2週間の短期間に症状は改善します。しかし、一旦軽快した症状が再燃する事もあり、腰痛が慢性化するケースもあります。
運動療法は急性腰痛に対しては推奨されていない一方で、過度の安静は望ましくないとされています。これらのことより、急性腰痛の場合は痛みを誘発しない程度の運動は行っても良いとされています。

疼痛源となる椎間板への負荷を減らすために①体幹筋力と②柔軟性の強化を行うことは効果的です。

薬物療法は椎間板性腰痛に対しては対症的な効果を期待して使用します。
まずは非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)、アセトアミノフェンなどの鎮痛薬使用が考慮されます。

鎮痛薬の使用法としてはなるべく頓服使用が望ましいですが、慢性持続性の痛みの場合には、短期間であれば定期的に内服継続しても良いです。これらの薬剤が無効である場合には弱オピオイド製剤やプレガバリンなどの薬剤の使用も考慮されます。

当院での治療方針

病歴、症状、画像所見などを総合的に評価し、原因を追及します。
疼痛を出来るだけ軽減した状態で、まずは積極的な理学療法士によるリハビリテーションを行うことで症状の改善を図ります。

医師より

医師より
院長

椎間板性腰痛の診断は残念ですが確定診断が難しい疾患です。
大切なのはその病歴、症状、画像所見などを総合的に評価することで、診断を下すことだと思います。また、疼痛のコントロールをした状態で、体幹筋力や柔軟性時を向上させることで症状が劇的に改善する患者さんもおられます。

椎間板性腰痛の予防

ストレッチング

ストレッチングは、軟部組織の拘縮を取り除き、腰椎全体の可動域を改善させるために重要です。
特に、腰痛をお持ちの患者さんは、体幹・下肢の拘縮が少なからず存在します。

ストレッチングのポイントは

  1. ゆっくり息を吐きながら行うこと(1動作を10秒以上かけて5秒間保持すること/1日3セット目安)
  2. 決して無理をせず、痛みや不快感が生じたらストップすること

です。以下に例を示します。

腹直筋のストレッチンング
腹直筋のストレッチンング
脊柱起立筋のストレッチンング
脊柱起立筋のストレッチンング
腸腰筋のストレッチンング
腸腰筋のストレッチンング

背筋筋力増強とストレッチングの同時トレーニング

(左:吸気に合わせて3秒壁をゆっくり押す。これが背筋筋力訓練になります。)
(右:その後呼気に合わせて、ゆっくりと可能な範囲で前屈します。これが背筋ストレッチング運動になります。)

(左:吸気に合わせて3秒壁をゆっくり押す。これが背筋筋力訓練になります。)
(右:その後呼気に合わせて、ゆっくりと可能な範囲で前屈します。これが背筋ストレッチング運動になrります。)

参考文献

遠藤 達也ら 腰痛に対するリハビリテーション  MB Orthop. 36(9) : 90-101, 2023.
青木 保親ら 椎間板性腰痛の診断と治療  MB Orthop. 36(9) : 17-24, 2023.
日本整形外科学会診療ガイドライン.委員会・腰 痛診療ガイドライン策定委員会:腰痛診療ガイドライン2019.南江堂,2019.
Hyodo H,et al:Discogenic pain in acute non- specific low-back pain. Eur Spine J.14:573- 577,2005.
Boos N,et al:Classification of age-related changes in lumbar intervertebral discs:2002 Volvo Award in basic science. Spine.27:2631- 2644,2002.

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