小児上腕骨顆上骨折
小児上腕骨顆上骨折
小児上腕骨顆上骨折とは
こどもの外傷で、橈骨遠位端骨折についで頻度が高い骨折です。
図のように上腕骨の関節面より少し上の部分で起きます。
図:左肘の骨格図
この部分は周りより骨が少し薄くなっているため、折れやすくなります。また、この部分は骨折部の近くを通っているため、骨折の程度が大きい場合には、折れた骨の断端が神経や血管を傷つけてしまうこともあります。
2-13歳(6-7歳が最多)にみられ、右側より左側が多く、しばしば神経損傷などの合併症を伴います。
小児上腕骨顆上骨折の原因
ほとんどは転倒や転落時に肘を伸ばした状態のまま手をつくことで受傷します。
小児上腕骨顆上骨折の症状
肘関節が腫れる、痛い、曲げられないなどの症状があります。
折れた骨片の角が皮下組織に引っかかり、皮膚の表面に陥凹を認めることがあります(パッカーサイン)。
図:受傷後の肘前方の皮膚
(a:左肘前方に横長の陥凹を、その周囲には皮下出血を認める)
(b:皮膚陥凹部の拡大像:パッカーサイン)
出典:関 敦仁ら : 上腕骨顆上骨折 整形外科看護 Vol.27 No.8, 2022
小児上腕骨顆上骨折の検査
単純レントゲン検査にて診断します。
図:骨折部にずれのない骨折
(a:正面像:骨折線は判然としない)
(b.側面像:骨折線ははっきりとしないが、黒い透亮像(⇨)が後方に張り出している(fat pad sign) これは、肘関節内骨折で血液が関節内に貯留した時にも脂肪の後方への張り出しが起きたことを示しています)
図:上腕骨顆上骨折のレントゲン写真
出典:坂 なつみら : 上腕骨顆上骨折 整形外科看護 Vol.23 No.1, 2018
小児上腕骨顆上骨折の治療
ずれが少ない場合には、ギプスを巻いて治すことも可能です。その場合は、肘を90度曲げた状態で3-4週間程度の固定を行います。
しかし、骨折部のずれが大きい場合、ギプスだけでは戻した状態を保ことができないので手術した方が良いでしょう。
医師より
大きな骨折をギプスで治療した場合、ずれが残ったまま骨がつくことがあります。手術でも、完璧にずれを戻せるわけではありませんし、こどもの骨は成長によって、多少のずれは矯正されていきます。しかし、ずれの程度によって肘の変形が残り、そのために肘の動きが悪くなることがあるので注意が必要です。
参考文献
坂 なつみら:上腕骨顆上骨折 整形外科看護 Vol.23 No.1, 2018
関 敦仁ら:上腕骨顆上骨折 整形外科看護 Vol.27 No.8, 2022