大腿骨頭壊死症
大腿骨頭壊死症
大腿骨頭壊死症とは
大腿骨頭は主に大腿骨頭-頸部から骨内に侵入する血管に血液供給を受けています。
この血管が、大腿骨頸部骨折やそのほかの原因によって障害を受けると、血液供給されている骨頭内の骨壊死をきたしやすい状態になります。その結果、大腿骨頭が壊死する状態を大腿骨頭壊死症と呼びます。その中でも血行障害の原因がはっきりしない大腿骨頭壊死症を特発性大腿骨頭壊死症と診断します。
大腿骨頭壊死症の原因
上述のように、何らかの原因(アルコール、ステロイド投与など)によって、大腿骨頭へ栄養する血流が遮断されることが原因です。
大腿骨頭壊死症の症状
股関節痛、可動域制限、跛行、荷重時痛などがあります。
大腿骨頭壊死症の検査
我が国では、厚生労働省の特発性大腿骨頭壊死症調査研究班が公表した診断基準が用いられています。(図)
画像検査はレントゲン検査、MRI検査、骨シンチグラム検査を用います。
大腿骨頭壊死症の治療
保存治療
病型分類によって、治療方法が決定します。(図)
壊死範囲が小さい場合(Type AやType B)は、圧壊を生じにくいので、保存療法の良い適応となります。
Type Bの場合、頻度は少ないですが圧壊を生じる可能性があるため、生活指導及び、必要に応じて免荷を指示します。
Type C-1とC-2は高頻度に圧壊を生じますが、発症していない段階では保存療法の適応ですので、生活指導と十分な免荷を行って発症を抑制するようにします。
圧壊が進行する場合には、いたずらに保存療法に固執するのではなく、手術療法を勧めます。
生活指導
体重コントロール、長距離歩行の制限、重量物の運搬禁止などです。
また、台所では高い椅子を使用したり、杖により免荷を指導します。
出典:西井 孝ら : 大腿骨頭壊死症 整形外科看護 Vol.23 No.4, 2018.
理学療法
疼痛の軽減の目的として、温熱療法が行われます。
作用機序は、温熱により疼痛閾値が上昇すること、筋緊張が緩和されること、末梢血管が拡張され、局所循環が促進されること、結合組織の伸展性が増大することなどです。
手術治療
大きく分けて関節温存術と人工股関節全置換術があります。
一般的に、若年患者さんでは関節温存術、病状が進行した中高年患者さんでは人工股関節全置換術が選択されます。
参考文献
西井 孝ら : 大腿骨頭壊死症 整形外科看護 Vol.23 No.4, 2018.
Sugano, N. et al. The 2001 revised criteria for diagnosis, classification, and staging of idiopathic osteonecrosis of the femoral head. J Orthop Sci. 7(5),2002, 601-5.
久保 俊一ら : 大腿骨頭壊死症 整形外科看護 Vol.15 No10, 2010.
久保俊一ほか.特発性大腿骨頭壊死症の診断・治療 に関するガイドライン.厚生労働省難治性疾患克服 研究事業特発性大腿骨頭壊死症調査研究班.2005
藤岡幹浩ほか.“ 股関節の痛み ”.リハビリテーション. 越 智 隆 弘 ほ か 編. 東 京, 金 原 出 版,2007, 208-15,(NEW MOOK 整形外科,20).