変形性股関節症
変形性股関節症
変形性股関節症とは
股関節は、骨盤と大腿骨により構成される球関節です。(図)
図:股関節の正常像/大腿骨と寛骨臼の関節面
出典:高田 亮平ら : 脊椎圧迫骨折とは 整形外科看護 Vol.23 No.4, 2018.
変形性股関節症は、股関節を形成している関節軟骨や骨が傷んでしまうことによって、股関節痛や機能障害を引き起こす病態です。(図)
図:正常股関節と変形性股関節症
変形性股関節症の発症年齢は40-50歳程度となっており、女性の方が罹患しやすいことがわかっています。
変形性股関節症の原因
日本における変形性股関節症の原因として寛骨臼形成不全が挙げられます。
寛骨臼形成不全は寛骨臼の低形成によって、関節荷重面の応力集中、関節の不安定性を生じることから、変形性股関節症を発症する原因となります。(図)
日本における変形性股関節症の原因の8割を占めると言われています。
図:寛骨臼形成不全
出典:高田 亮平ら : 脊椎圧迫骨折とは 整形外科看護 Vol.23 No.4, 2018.
変形性股関節症の症状
症状は、股関節痛、股関節可動域制限、股関節痛に伴う跛行(正常な歩行ができない事)です。
疼痛
鼠蹊部(下肢の付け根)が多いですが、大腿前面や臀部に生じることもあります。
跛行
片脚立位時に健側の骨盤が下がる現象(トレンデレンブルグ兆候)が認められます。
図:トレンデレンブルグ兆候
出典:高田 亮平ら : 脊椎圧迫骨折とは 整形外科看護 Vol.23 No.4, 2018.
可動域制限
進行に従って、足の爪切り、靴下の着脱、和式トイレの使用が困難になります。
進行することで、痛い方の足が短縮し、脚長差が生じることがあります。
変形性股関節症の検査
レントゲン検査では、関節裂隙が狭くなったり、大腿骨頭が変形を確認します。
また、病期分類があり、現時点でのどこまで進行しているか確認します。
大腿骨頭が上外側に亜脱臼することもあります。
変形性股関節症の治療
保存治療
患者教育、運動療法、薬物治療、歩行補助具の使用などがあります。
杖の使用は股関節への負担を軽減することができ、短期の疼痛緩和に有効とされています。
杖は患側の反対側に持ちます。転倒予防にも有効です。(図)
図:杖の使用
出典:高田 亮平ら : 脊椎圧迫骨折とは 整形外科看護 Vol.23 No.4, 2018.
多くの変形股関節症例では、まず保存治療が試みられ、改善が得られない場合は手術治療が考慮されます。
手術治療
手術治療は関節温存術と人工股関節全置換術に大きく分けられます。
人工股関節は現在、世界中で行われる変形性股関節傷に対する標準的な手術治療です。傷んだ関節を取り除き、インプラントによる新たな関節面を形成することによって、確実な徐痛効果と優れた機能回復を得ることが可能です。
図:人工股関節全置換術(カップ、ライナー、ステムで構成されることが一般的)
出典:高田 亮平ら : 脊椎圧迫骨折とは 整形外科看護 Vol.23 No.4, 2018.
当院での治療方針
変形性股関節症に対して外転筋力を増強することで進行が抑えられると報告されています。
当院では、投薬による徐痛を行った上で、積極的な理学療法士による運動指導+リハビリテーションを行い、外転筋力の増強を図ります。
また、疼痛が極度に強い場合は、超音波を使用して股関節内に痛み止めの注射を投与します。
変形性股関節症の予防など
前述のように、股関節の外転筋力を維持することが変形性股関節症を予防する方法です。
当院では理学療法士による外転筋力トレーニングの指導を行っておりますので、気軽に受診して頂ければと思います。
参考文献
高田 亮平ら : 脊椎圧迫骨折とは 整形外科看護 Vol.23 No.4, 2018.
神野哲也ほか.“変形性股関節症”.股関節学.久保俊一編.京都,金芳堂,2014,570-621.
Jingushi, S. et al. Osteoarthritis hip joints in Japan:involvement of acetabular dysplasia. J orthop Sci. 16(2),2011, 156-64.
日本整形外科学会診療ガイドライン委員会ほか編.変形性股関節症診療ガイドライン 2016.改訂第 2 版.日本整形外科学会ほか監修.東京,南江堂,2016,242p.