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変形性ひざ関節症

変形性ひざ関節症

変形性ひざ関節症とは

変形性ひざ関節症はひざの関節軟骨がすり減って、膝に痛みが出たり、関節が変形したりする疾患です。
日本では40歳以上で変形性ひざ関節症の患者数は2000-2500万人と言われており、実際に痛みなどの症状がある患者数は800万人と言われています。
特に50歳以上の女性に多くみられ、年齢が高齢になるにつれて患者数が増加します。

変形性ひざ関節症の原因

変形性ひざ関節症の要因はさまざまです。高齢、女性、肥満、急な体重増加、膝への過度の負荷、メタボリックシンドロームなどがリスク要因として挙げられます。
また、骨折などの外傷や関節リウマチなども原因になることがあります。X脚や日本人に多いO脚も膝にかかる体重の負荷が偏るため、膝の変形を進行させて痛みを生じさせます。

変形性膝関節症 病態・診断・治療
出典:石島 旨章ら:変形性膝関節症 病態・診断・治療・患者指導 Osteoporosis Japan PLUS Vol. 1 No. 4 2016 115:546–551, 2012.

変形性ひざ関節症の症状

変形性ひざ関節症の主な症状は、歩行時や階段下りに生じる痛みです。
初期段階ではひざが強ばる、立ち上がるときに膝に違和感があるなどの症状が現れ、徐々にしゃがむ動作や階段の上り下り、正座が困難になり、安静時や就眠時にも痛みを感じるようになります。
さらに進行すると、膝のO脚の度合いが強くなり、膝を完全に伸ばしたり曲げたりできなくなり、日常生活に支障をきたします。

変形性ひざ関節症の検査

診察では、視診、触診で圧痛、可動域、腫れ、変形を調べ、その後X線で診断を行います。X線検査では、関節の隙間と骨がすり減った時に生じる骨棘の程度を見て評価します。

X線検査だけでは説明のつかない痛みや症状がある場合は、MRIを使用して関節内の状態を詳細に調べることもあります。また、関節リウマチや痛風、化膿性関節炎などの合併症がないか、鑑別のために尿検査、血液検査をすることもあります。

変形性膝関節症の病期分類|【グレード0:正常】【グレード1:ほぼ正常】関節の隙間が保たれているが、わずかな骨棘形成、または軟骨下硬化。【グレード2:初期】関節の隙間が狭くなる。骨棘ができはじめる。骨変化なし。【グレード3:中期】関節の隙間がさらに狭くなり、骨棘が目立ってくる【グレード4:進行期】関節の隙間が無くなり、骨変化が著しい
図:変形性膝関節症の病期分類(Kellgren & Lawrence分類)
出典:Kellgren JH, Lawrence JS. Rheumatism in miners. II. X-ray study. Br J Ind Med. 1952;9:197–207.

変形性膝関節症の病期分類

  • 【グレード0:正常】
  • 【グレード1:ほぼ正常】関節のすき間が保たれているが、わずかな骨棘形成、または軟骨下硬化
  • 【グレード2:初期】関節のすき間が狭くなる。骨棘ができはじめる。骨変化なし
  • 【グレード3:中期】関節のすき間がさらに狭くなり、骨棘が目立ってくる
  • 【グレード4:進行期】関節の隙間が無くなり、骨変化が著しい

変形性ひざ関節症の治療

関節軟骨のすり減りは修復できません。膝OA治療の目的は痛みを取り除き、病態の進行を遅らせてADL(日常生活動作)の維持です。
治療は保存療法と手術療法に分けられます。

保存療法

保存療法では主に運動療法と薬物療法の2つを併用して行いますが、運動療法が基本となります。
運動は筋力を維持するだけでなく、痛みを和らげる効果が強いことがわかってきました。
痛みのために体を動かさないでいると、筋力が低下して膝関節への負担が増大し、結果として痛みが増すことになります。
したがって、痛みを感じないで動き続ける運動をすることが大切であり、理学療法士やトレーナーによる指導が必要です。

運動療法がなぜ必要か

関節の軟骨は、滑膜から分泌される関節液から、機能を保つ栄養を与えられています。
膝の曲げ伸ばしで関節軟骨に圧力が加わると、関節液が関節軟骨に浸透し、水分・酸素・栄養分が補給されます。つまり、膝関節を動かさないでいると関節軟骨は関節液を吸収できないため、栄養などがうまく行き渡らないことになります。そのため、関節軟骨を健康の維持には適度な膝の運動が欠かせないのです。

治療薬は、非ステロイド性消炎鎮痛剤とヒアルロン酸関節内注射が最も多く用いられます。消炎鎮痛剤は消化管障害と腎障害のリスクがあるため、使用は病期・病態によって使い分け、短期的に使用します。薬物療法で痛みを和らげることで運動療法が可能となり、筋力を増強し痛みを更に軽減させることを目指します。

そのほかに、温熱療法、干渉波などの電気療法、O脚で膝の内側にかかる負担を外側に逃す足底板を用いた装具療法も選択肢として考えられます。

温熱療法

患部を暖めて血行を良くして、新陳代謝を活発にします。ホットパックなどで皮下組織の浅い所を温める、干渉波で深いところまで温め方法などがあります。

ホットパック
ホットパック
ワイドレンジ低周波・干渉波治療器
干渉波治療器

装具療法

O脚で膝の内側にかかる負荷を外側に移動させる足底板や、膝を安定化させるサポーター、そして杖などを使うことで膝への負担を軽くして痛みを和らげます。

保存療法で痛みの症状が緩和されない場合は、ひざに対する再生医療が選択肢としてあります。ご自身のPRP(多血小板血漿)や脂肪幹細胞を膝関節に注射することで、炎症を抑える働きを促し、ひざの痛みの改善を目指します。

それでも膝の痛みが治らず、日常生活に支障をきたす場合は手術療法が検討されます。

手術療法

手術療法には関節鏡手術、高位脛骨骨切術、人工膝関節置換術があります。

関節鏡手術

対象は初期-中期。毛羽だった関節軟骨や痛んだ半月板を切除して痛みを軽減します。
入院日数は3-5日間と短く、傷も小さくてすみますが、症状の軽減効果は長続きしにく、効果の持続性は限られています。

高位脛骨骨切り術

対象は中期-末期。
脛骨の膝関節に近い部位を切ってO脚を矯正します。関節を温存する方法で50-60歳代の比較的若いかたに向きます。手術後には一定の免荷期間が必要です。

人工膝関節置換術

対象は中期-末期。
傷んだ関節全体を置換する人工膝関節全置換術と、膝関節の内側のみを置換する人工膝関節単顆置換術があります。
一般的に60歳以上の患者さん行われます。手術翌日から全体重をかけて歩行可能です。
入院期間は約3週間程度です。

医師より

医師より
院長

単に変形性ひざ関節症と言っても病期により症状はさまざまであり、治療方法は異なります。それぞれの病期に沿った適切な治療が重要です。
ご自身でも簡単に行えるエクササイズやリハビリテーションと注射を組み合わせることで、痛みが改善する方も多くいらっしゃいます。膝の違和感や歩行時の痛みを自覚されたら、お気軽にご相談ください。

当院での治療方針

当院では変形性ひざ関節症の病期を判断して、病期に応じた治療を提案します。
全ての治療の根底にあるものは理学療法士によるリハビリテーションを基にした運動療法です。
あらゆる保存療法で症状が改善しない場合かつ、手術にて症状の改善が期待できる場合のみ、手術加療を勧めます。

予防など

痛くない範囲で運動を継続することで、徐々に筋力がついて痛み自体が改善していくケースも多いです。運動療法を実施しながら、薬物療法や再生医療などさまざまな選択肢を検討しトライして行くことで、出来るだけ手術治療を避けられると考えております。
保存療法で症状の改善が見込めない場合、関連施設にて院長自らが手術加療を行います。
最初から最後まで、患者さんと一生のお付き合いとなる気持ちで治療に臨みますので、よろしくお願いします。
このように、様々な治療方法があるので、治療にしっかり励むことでこれからも十分生活を楽しむことを、私たちと一緒に考えていきましょう。

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参考文献

・石島 旨章ら:変形性膝関節症 病態・診断・治療・患者指導 Osteoporosis Japan PLUS Vol. 1 No. 4 2016 115:546–551, 2012
・Yoshimura N, Muraki S, Oka H, Mabuchi A, En-yo Y, Yoshida M, Saika A, Yoshida H, Suzuki T, Yamamoto S, Ishibashi H, Kawaguchi H, Nakamura K, Akune T:Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis and osteoporosis in Japanese men and women:the research on osteoarthritis/ osteoporosis against disability study. J Bone Miner Metab 2009 ; 27 : 620-628
・Yoshimura N, Muraki S, Oka H, Kawaguchi H, Nakamura K, Akune T:Cohort profile:research on osteoarthritis/osteoporosis against disability (ROAD)Study. Int J Epidemiol 2010 ; 39 : 938-995
・Kellgren JH, Lawrence JS. Rheumatism in miners. II. X-ray study. Br J Ind Med. 1952;9:197–207.

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