反復性肩関節脱臼
反復性肩関節脱臼
反復性肩関節脱臼とは
肩関節は関節窩が小さく、そのおかげで大きな可動域を得ていますが、その一方で不安定な関節でもあります。そのため体の中で最も脱臼の多い関節の一つです。
肩関節の脱臼の9割以上が前方に脱臼します。
その際、肩甲骨関節窩の前方にある関節唇や関節包、靭帯などが剥がれてしまいます。(図)
それが修復されないと、ちょっとした外力で簡単に脱臼し、繰り返すようになります。
これを反復性肩関節脱臼と言います。
図:反復性肩関節脱臼
出典:平川 雅士ら : 反復性肩関節脱臼 整形外科看護 Vol.24 No.6, 2019.
肩関節とは
関節窩という小さなお皿の上に上腕骨頭というボールが載っている状態で、構造上不安定最も可動域が大きい関節です(図)。
肩関節は、腱板(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)が同時に収縮することで上腕骨頭を関節窩に引きつけ、運動の支点を作っています。
図:肩関節の解剖図
出典:石原 美紗子ら : 反復性肩関節脱臼 整形外科看護 Vol.19 No.4, 2014.
反復性肩関節脱臼の原因
- スポーツなどの肩の激しい強打
- 転倒事故などによる肩の強打
肩関節部の骨折や、関節唇が外れると、若い人は軟部組織が柔らかく脱臼の道を作りやすいため脱臼を繰り返すことになります。
反復性肩関節脱臼の症状
肩関節脱臼時の肩周囲の激痛、肩後方の凹み、手が痺れることもあります。
また、再現性の肩関節脱臼、「脱臼しそうだ」という不安感を抱きます。
反復性肩関節脱臼の検査
身体診察として、以下のものを行います。
- 前後方向の関節動揺性
- 前方アプリヘンションテスト陽性(あえて脱臼を起こす方向(外転、外旋)に負荷をかけることで、不安感や関節の不安定性が誘発されるかのテスト)
単純レントゲン検査で上腕骨の骨頭の後外側部位の陥没(ヒルサックス病変)、CT/造影MRIで前方関節唇や関節窩縁の骨折(バンカート病変)の評価を行います。
反復性肩関節脱臼の治療
受診時に脱臼している場合は、脱臼を整復します。反復性脱臼になってしまう人は若い人ほど高率で、10歳代では80~90%が反復性になってしまうと言われています。反対に、40才以上で初めて脱臼した場合には再脱臼する人はあまりいません。
確実な治療は剥がれた関節包や靭帯を修復する手術治療です。主な原因がバンカート病変であることから、バンカート修復術が行われています。(図2)
近年では関節鏡での手術が一般的に行われています。
図2:関節包や靭帯の修復術
出典:平川 雅士ら : 反復性肩関節脱臼 整形外科看護 Vol.24 No.6, 2019.
医師より
後骨幹神経麻痺は比較的稀な疾患ですが、特徴的な指の症状としてはっきりと出てくるので、その疾患の存在を知っていれば早期発見が可能です。また、回復する症例が多く、比較的予後の良い疾患です。上記のような症状が出てきた際は、整形外科を受診することをお勧めします。
参考文献
平川 雅士ら : 反復性肩関節脱臼 整形外科看護 Vol.24 No.6, 2019.
石原 美紗子ら : 反復性肩関節脱臼 整形外科看護 Vol.19 No.4, 2019.
可知芳則.肩関節および上腕.整形外科疾患ビジュアルブック.落合慈之監.東京,学研メディカル秀潤社, 2012,238-49.
山田真一ほか.“肩関節の疾患と治療”.前掲書 2).63-71.