上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)とは
テニス肘とは上腕骨外側上顆炎の呼称であり、テニスのバックハンドストロークなどにより発症することからこの呼称があります。
上腕骨外側上顆に付着する手関節、手指の伸展筋群の腱起始の障害です。
30-50歳での発症が多く、スポーツとしてはテニス、バドミントンなどのラケットスポーツやゴルフでみられますが、実際は労働や日常動作での発症が多いです。
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の原因
基本的には伸展筋群の腱付着部(肘)のオーバーユース(過度の使用)によって炎症、変性、微小断裂が起きると言われています。
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の症状
以下のような症状を訴えます。
- 手を強く握ると痛い
- 手関節を伸展させると痛い
- タオルを絞れない
- ドアノブを回せない
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の検査
Thomsen テスト
手をグリップした状態で手関節を伸展、前腕回内してもらい、検者が患者さんの運動に抵抗を加えて疼痛を誘発するテストです。
その他、中指伸展テスト(図)、chair テストなどの疼痛誘発テストが診断に有用です。
画像検査では、レントゲンでは通常明らかな異常は認めません。
その為、超音波検査や、必要に応じてMRI検査で異常所見を同定します。
図:Thomsenテストと中指伸展テスト
出典: 新井 猛ら : 上腕骨外側上顆炎 MB Orthop. 29(11) : 45-49. 2016
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の治療
急性期
局所安静
疼痛が強い、安静が保てない場合は着脱可能な装具やギプスシーネ(前腕-手)などによる固定を行うことがあります。
注射
少量のステロイド入りの局所麻酔薬を疼痛部位に注射します。
急性期の症状を改善する効果は高いですが、頻回に繰り返すと、長期的には腱の脆弱化や腱断裂をきたす可能性があります。
慢性期(≒急性期の症状が改善した時期)
主にストレッチングと筋力強化訓練を行います。
ストレッチング
前腕伸展筋群の緊張を軽減し、柔軟性を獲得します。
肘関節伸展+前腕最大回内位で手関節を多動的に屈曲(掌屈します)
筋力強化訓練
肘関節伸展+前腕最大回外位で手関節を最大伸展のまま筋をゆっくり収縮させます(等尺性運動)。疼痛が生じなければ手関節を屈曲位から伸展(等張性運動)します。
再生医療について
多くの報告で、多血小板(Plate rich plasma :以下, PRP) 療法による疼痛の改善が報告されています。
MRIによる画像の評価でも、27例中24例で改善を認めたという報告もあります(図)。
図:テニス肘に対してPRP注射後の経過(施行前と4ヶ月後
出典:岡田 拓也ら 難治性上腕骨外側上顆炎に対するPRP療法後のMRI変化について. JOSKAS 48(1) , p4-5 , 2023.
(この症例はステロイド注射でも無効例に対してPRP注射をした症例です。白色の炎症を示す場所が消失しています)
他の報告でも、再生医療による効果は24ヶ月継続していたと報告されています。
参考文献
岡田 拓也 . 難治性上腕骨外側上顆炎に対するPRP療法後のMRI変化について. JOSKAS 48(1) , p4-5 , 2023.
Suzuki T, et al. Repeated magnetic resonance imaging at six follow‒up visits over a 2‒year period after platelet‒rich plasma injection in patients with lateral epicondylitis Journal of Shoulder and Elbow Surgery. 2022;31;1581‒ 1587.
日本整形外科学会,他,監:上腕骨外側上頼炎診療ガイドライン 2019.改訂第2版.南江堂,2019,p27-8.
佐藤和毅 . 日本医事新報 (5118): 46-47, 2022.