グロインペイン(鼠径部痛症候群)
グロインペイン(鼠径部痛症候群)
グロインペイン(鼠径部痛症候群)とは
グロインペインとは、スポーツ障害の一つで鼠径部周囲の様々な部位に痛みや不快感を起こす疾患の総称です。
図:スポーツ選手に発生する鼠径部周囲痛
原因はさまざまで、恥骨下枝疲労骨折、長内転筋腱断裂、大腿骨臼蓋インピンジメントなどの疾患も原因の一つとなります。
この解説では特に難治性のグロインペインの主な原因である恥骨結合の破綻によるグロインペインについて解説します。
グロインペインの原因
難治性のグロインペインの原因は、恥骨結合のPubic plateの破綻が原因で疼痛が発生すると言われています。
特にサッカー選手に多く発症すると言われ、その理由は片脚立位でキックすることだけでなく、軸足を捻って骨盤の捻れ運動を繰り返す事による骨盤や恥骨結合(図)への歪みの外力が関係していると思われます。
図:恥骨結合の位置
グロインペインの症状
太ももの付け根や鼠径部に疼痛や不快感を覚えます。
図のようにさまざまな場所に圧痛や運動痛があり、時に鼠径部や大腿内側、下腹部にまで疼痛が放散するのが特徴です。
図:スポーツ選手に発生する鼠径部周囲痛
グロインペインの検査
MRI検査が有用とされています。MRIにて、恥骨結合の骨髄浮腫(BMO)とsecondary cleft sign(薄筋腱、短内転筋付着部微細損傷)を認めます。
恥骨結合のpubic plateの破綻まで基質的変化が進むと難治性の病態になると考えます。
図a:恥骨結合のBMO(骨髄浮腫)、secondary cleft sign
図b:恥骨結合のpubic plateの破綻
出典:仁賀 定雄ら:アスリートの鼠蹊部痛 臨床スポーツ医学Vol.39 No.6, 2022-6.
グロインペインの治療
MRIでの特徴的な所見(cleft sign,骨髄浮腫)を認める場合は、運動を中止してリハビリテーションを行うと継続的に消えていく場合が多いです。
当院での治療方針
まずは安静にすることです。最低でも2週間の安静期間が必要です。また、アスリートリハビリテーションとして、難治性のグロインペインの治療はpubic plateの破綻をきたさないように機能を維持、改善する必要があります。
グロインペインの予防
Cleft signを伴う難治性のグロインペインは何らかの要因により全身の機能的な運動連鎖が低下し、骨盤帯に機能不全が発生することでpubic plate(恥骨結合)に過剰なストレスが加わり発症すると考えられます。
機能不全が発生してもすぐに組織にダメージや痛みを生じないので、選手自身が気づかないうちに徐々に機能不全が進行し、痛みを感じ始めた時には全身へ機能不全が波及し、cleft signなどの組織のダメージが生じていることが多いです。
この現象を予防する方法として、クロスモーションの意識づけを理学療法で行っていくことが大切です。普段のトレーニングでpubic plateの破綻をきたさないように機能を維持、改善することが予防になります。
医師より
当院ではアスリートリハビリテーションの経験が豊富な理学療法士が複数在籍しております。サッカー、野球、バスケットボールなどさまざまなスポーツ経験者が在籍しております。各スポーツに応じた動き方、注意点を意識してリハビリテーションを行うことが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
参考文献
仁賀 定雄ら:アスリートの鼠蹊部痛 臨床スポーツ医学Vol.39 No.6, 2022-6.
藤井康成ほか:部位別の障害予防マルアライ メント症候群の予防一骨盤のmobilityの新しい 評価法の有用性一.臨床スポーツ医学.24 (12) :1301-1307,2007.
Saito M,et al: The cleft sign may be an independent factor of magnetic resonance imaging findings associated with a delayed return-to- play time in athletes with groin pain. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc.29:1474- 1482,2021.