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腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアの痛みとしびれ、手術以外の選択肢は?原因から治療まで専門医が解説


急に腰に激痛が走り、お尻から足にかけてしびれが広がる…。もしかしたら、そのつらい症状は「腰椎椎間板ヘルニア」が原因かもしれません。「ヘルニア」と聞くと、「手術が必要なのでは?」と不安に思われる方も多いのではないでしょうか。しかし、実際には手術をせずに症状を改善させるための様々な選択肢があります。

ここでは、腰椎椎間板ヘルニアとは一体何なのか、その原因や症状、ご自身でできるチェック方法から、病院で行われる詳しい検査、そして最新の治療法まで、専門医の視点から包括的に解説します。あなたの不安を解消し、最適な治療法を見つけるための一助となれば幸いです。

腰椎椎間板ヘルニアとは?その正体とメカニズム

背骨は、椎骨(ついこつ)というブロック状の骨が積み重なってできています。そして、その椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たしているのが「椎間板(ついかんばん)」です。椎間板は、中心にあるゼリー状の「髄核(ずいかく)」と、それを覆う丈夫な「線維輪(せんいりん)」という二重構造をしています。

腰椎椎間板ヘルニアとは、何らかの理由でこの線維輪に亀裂が入り、中の髄核が外に飛び出して、近くを走る神経を圧迫してしまう状態のことです。主に腰の骨である腰椎で起こり、圧迫される神経の場所によって、腰、お尻、足に痛みやしびれを引き起こします。

20代から40代の比較的若い世代に多く見られますが、加齢による椎間板の変性も原因となるため、幅広い年代で発症する可能性があります。重いものを持ち上げる動作や、長時間のデスクワーク、悪い姿勢などが発症の引き金となることがあります。

図:左 正常な椎間板/右 椎間板ヘルニア
出典:稲毛一秀. (2021). 腰椎椎間板ヘルニア. 整形外科看護, 26(5), 474-479.

もしかして腰椎椎間板ヘルニア?ご自身でできる症状チェックと受診の目安

腰椎椎間板ヘルニアの最も代表的な症状は、「坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)」です。これは、腰からお尻、太ももの裏、ふくらはぎ、足先へと広がる痛みやしびれを指します。

以下のような症状に心当たりはありませんか?

  • 腰やお尻に鋭い痛みがある
  • 片方の足に電気が走るような痛みやしびれがある
  • 前かがみになると痛みが強まる
  • 咳やくしゃみをすると腰や足に響く
  • 足に力が入りにくい、つま先立ちがしにくい
  • 長時間座っているのがつらい

ご自身でできる簡単なチェックとして「下肢伸展挙上試験(SLRテスト)」があります。仰向けに寝て、膝を伸ばしたまま片足をゆっくりと持ち上げてみてください。腰や足に強い痛みが走る場合は、ヘルニアが神経を圧迫している可能性があります。

これらの症状が一つでも当てはまり、日常生活に支障が出ている場合は、一度整形外科を受診することをお勧めします。特に、足の感覚が全くない、力が入らない、尿や便が出にくいといった症状(馬尾症候群)が現れた場合は、緊急の対応が必要なため、すぐに医療機関を受診してください。

腰椎椎間板ヘルニアの検査

クリニックでは、まず丁寧な問診で症状の始まりや経過、痛みの性質などを詳しくお伺いします。その後、医師が身体を動かしたり、感覚や力の入り具合を調べたりする理学所見を行います。SLRテストもこの診察に含まれます。

次に、画像検査で身体の中の状態を詳しく調べます。

X線(レントゲン)検査

主に骨の状態を確認します。椎間板そのものは写りませんが、骨の変形や他の病気の可能性を排除するために行います。

MRI検査

椎間板、神経、筋肉といった軟部組織を鮮明に映し出すことができるため、腰椎椎間板ヘルニアの診断において最も有用な検査です。どの場所で、どの程度ヘルニアが神経を圧迫しているかを正確に確認できます。

図:腰椎椎間板ヘルニアの分類
髄核突出の形態によって4つに分類される(Macnab分類)
出典:稲毛一秀. (2021). 腰椎椎間板ヘルニア. 整形外科看護, 26(5), 474-479.

図:腰椎椎間板ヘルニアのMRI
L5/Sレベルで左神経根の圧迫を認める
出典:稲毛一秀. (2021). 腰椎椎間板ヘルニア. 整形外科看護, 26(5), 474-479.

あなたに合った腰椎椎間板ヘルニアの治療プランを見つける

腰椎椎間板ヘルニアの治療は、多くの場合、手術をしない「保存療法」から開始します。

保存療法

安静と薬物療法

痛みが強い急性期は、無理のない範囲で安静を保ちます。消炎鎮痛薬(NSAIDs)の内服や外用薬(湿布)を使用して、まずは炎症と痛みを和らげます。神経の興奮を抑える薬が処方されることもあります。

装具療法

コルセットを装着し、腰への負担を軽減します。

リハビリテーション

痛みが少し落ち着いてきたら、理学療法士の指導のもとで運動療法やストレッチを開始します。体幹の筋肉を鍛えたり、硬くなった筋肉をほぐしたりすることで、腰椎の安定性を高め、再発を防ぎます。

エコーガイド下注射

神経ブロック注射

痛みの原因となっている神経の周りに、局所麻酔薬やステロイド薬を注射し、炎症と痛みを強力に抑えます。エコーで神経の位置を正確に確認しながら行うため、安全かつ効果的です。

図:エコー下での仙骨硬膜外ブロック(白矢印は注射針)
出典:Teixeira, A., & Barbosa, J. (2023). Paraplegia Following Ultrasound-Guided Caudal Epidural Block in Chronic Lumbosciatica: What Can Be Learned From This Complication?. Cureus, 15(11)

手術療法

保存療法を3ヶ月程度続けても効果が見られない場合や、麻痺が進行する場合、排尿・排便障害がある場合などには手術が検討されます。近年は内視鏡を使った低侵襲な手術も普及しています。

腰椎椎間板ヘルニアの予防、治療期間と今後の見通し

腰椎椎間板ヘルニアは、自然に軽快することも多い疾患です。多くの場合、適切な保存療法によって数週間から数ヶ月で症状は改善していきます。

日常生活では、以下の点に気をつけることが予防と再発防止につながります。

  • 長時間同じ姿勢をとらない(特にデスクワーク)。
  • 物を持ち上げる際は、膝を曲げて腰を落とし、身体に引き寄せてから持ち上げる。
  • 適度な運動を習慣にし、体幹の筋力を維持する。
  • 肥満に注意し、適正体重を保つ。

つらい腰椎椎間板ヘルニアの症状をあきらめないで、専門医にご相談ください

腰椎椎間板ヘルニアによる腰や足の痛み、しびれは非常につらいものですが、その多くは手術をせずに改善が期待できます。大切なのは、ご自身の状態を正確に把握し、適切な治療を選択することです。
最近では、MRIなどの精密検査に加え、エコーを用いた診断やハイドロリリースのような新しい治療法も登場し、治療の選択肢は大きく広がっています。

「もう治らないかもしれない」と一人で悩まず、まずは整形外科の専門医にご相談ください。あなたの症状に寄り添い、最適な治療プランを一緒に見つけていきましょう。

監修者情報

桃谷うすい整形外科 院長 臼井 俊方

参考文献

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